教師はノーベル賞クラス「パブリックスクールの実態」

入学後は生徒の個性の強さや多様性に驚く場面が多かったそうだ。

「パブリックスクールは、以前はイギリス国内の上流階級向けの学校でしたが、今はロシアや中国をはじめ世界各国から優秀な生徒が集まっています。それに生徒たちは勉強以外にも才能を持っている子が非常に多い印象です。手品の全英チャンピオン、サッカーのナイジェリア・ナショナルジュニアチーム代表選手、13歳にして俳優活動のかたわら起業している子もいます。ドライバーが学校まで迎えに来て“今から会議だから”と出て行く子もいるそうです」

「ほかにもインド系の子で、普段はテニスをしている姿しか見ないのに、オーケストラではビオラを弾き、学校主催のコンサートではピアノソロ。勉強でもすべての教科で学年トップ、科学は大学入試統一試験のイギリス最高得点を記録。語学も堪能だし、卒業前に運転免許まで取得しているという超人がいて、長男は『いつ勉強しているんだ?』とショックを受けていました(笑)」

こうした抜きんでた生徒に対し、パブリックスクールでは勉強だけでなく、音楽やスポーツなど、さまざまな分野ごとに“スカラー”と呼ばれる称号を与える。制服から寮の場所、食事まで差がつくそうだ。教師のレベルも超一流で、博士号を持っている人も多い。

「なかにはノーベル賞候補に挙がったことのある先生もいるそうです。『生徒が理解できなければそれは教師の責任』という意識が強いので、生徒たちの興味を引くためにさまざまな工夫をされているようです」

ウィンチェスター校の校舎(写真=iStock.com/TonyBaggett)

卒業生はオックスフォード大やケンブリッジ大に進学

授業以外に週に1、2回行われるSociety Talkという自由参加型の講演会もある。

「各界の著名人に体験談を話してもらうのですが、登山家や小説家、政治家など幅広く招いているようです」

長期休みの宿題はなく、ボランティアやコンテストに取り組むことも特に奨励されていないという。

「先生方が常々おっしゃるのが、“卒業したときにやり残したことがあったと後悔してほしくない”ということ。ゆっくり自由に過ごしたり、やりたいことに打ち込んだりした経験がないと、大学受験を前にしてものびしろがなくなってしまいます」

密度の濃いアカデミックな雰囲気の6年間を過ごし、卒業生はオックスフォード大やケンブリッジ大、アメリカのアイビーリーグなどに進学する。

イギリスのトップ校は多くの日本人から見ると、はるか遠くの存在だ。しかし、シンガポール、日本、フランス、イギリスの教育制度に触れたモウリーさんはこう断言してくれた。

「日本人の学力は世界最高水準です。しかし、“もっと個性を出せばいいのに、もったいない”と感じることもあります。パブリックスクールの良さは、個性豊かな生徒たちがお互いを褒めたたえあう文化があること。どんな生徒も必ず評価される機会があります。お互いの才能を素直に認めあい、寮生活で能力を生かしあうことで、社会を生き抜く個性と社交性が身につくのではないでしょうか」