※本稿は、小笹芳央『モチベーション・ドリブン』(KADOKAWA)を再編集したものです。
欧米先進企業の働き方を真似る愚
働き方改革を進めるうえで、欧米の先進企業の働き方を参考にする企業は多い。
みなさんの会社の人事担当者も、グーグルの元人事トップ、ラズロ・ボックが書いた『ワーク・ルールズ!』(東洋経済新報社)や、新しい組織論を展開している『ティール組織』(フレデリック・ラルー著、英治出版)といった本をきっと読んでおられることだろう。近年、欧米先進企業の人事・組織本はいくつもベストセラーになっている。
しかし、本当に欧米の先進企業の働き方が、一般的な日本企業の参考になるのであろうか。そもそも、グーグルのような働き方をしたから、グーグルはグーグルになり得たのかといえば、そうではない。グーグルは、プラットフォーマーとして一発当て、その余力があるから「for One」寄りに見える働き方が許される。因果関係が逆なのだ。
私は組織変革の基軸に「One for All, All for One(個人は組織のために、組織は個人のために)」という考え方を置いているが、いわゆるグーグル的な働き方は「for One」として魅力的な施策が目立っている。
少し落ち着いて考えればわかりそうなものだが、「グーグルのような働き方をしたらグーグルになれる」わけではなく、「プラットフォーマーとして一発当てたからグーグルのような働き方ができる」と見るべきだ。
因果関係のボタンを掛け違えてはいけない
これはグーグルに限らない。フェイスブックでも、アマゾンでも同じだ。プラットフォーマーとして一発当てたから「for One」寄りの働き方が許され、その「for One」寄りの働き方を求めて優秀な人、優秀なエンジニアが集まる。
優秀なエンジニアが集まれば、サービスが進化し、業績も上がる。新しい働き方のメニューも追加され、より「for One」寄りの働き方が実現して人が集まる――こうした好循環が起きているのだ。
だから、グーグルの真似をしてもグーグルにはなれない。いや、それどころか、因果関係の最初のボタンを掛け違えたまま、“グーグル的な”働き方ばかりを真似すれば、その企業は、おそらく組織が崩壊する。実際、そうした働き方を取り入れたのに人が長続きせず辞めてしまうとか、期待するようなクリエイティブな成果が出ないといった悩みをもつ組織はある。