イスラエルの心理学者U・グニージー博士の研究グループが、高校生に各家庭を回らせて、障害者のための寄付金を募金させるという実験をしたことがある。

その際、「集めたお金の1%をあげるよ」と小さな報酬を約束するより、「集めたお金の10%をあげるよ」と大きな報酬を約束したほうが、高校生も張り切って募金してくることが判明した。小さな報酬しかあげないグループでは、総額で153.6ドルしか集めてこなかったが、大きな報酬を約束したグループでは、総額で219.3ドルも集めてきたのだ。

私たち人間はきわめて単純で、ご褒美が約束されていたほうが約40%もたくさん頑張れるのである。ご褒美もないのに、大変な努力や労力を払える人はいない。目標が完遂できるかどうかは、ひとえにご褒美の魅力にかかっている。

ご褒美が用意できたとして、目標を決める際に注意すべきことが3つある。

1つ目は用意したご褒美と、努力が見合っているかどうかだ。「毎日、単語を3つだけ覚える」という簡単な目標に対して、「それを2週間続けたら、世界1周の船旅のご褒美をあげよう」というのは、褒美のやりすぎである。よほど金銭的、時間的な余裕がある人なら、それもいいだろうが、あくまでご褒美と努力が見合っていなければいけない。

決め手は、その目標が自分にとってやや困難と思えるかどうかだ。達成するのがあまりにも困難な目標を立ててしまうと、やる気がくじけてしまう。かといって、あまりにやさしい目標を立てても、何のための目標なのかがわからなくなる。困難すぎず、やさしすぎずを目安とするのがいい。

米国メリーランド大学のE・ロックとG・ラザムは、目標設定に関する心理学の論文を400本以上も再分析し、私たちがもっともやる気をかき立てられるのは、やや困難な目標であることを突き止めた。

私たちは、やれば100%できてしまうことに対しては、あまりやる気が出ない。簡単すぎるからである。手ごたえがないと、やりがいや達成感を味わえないのだ。努力をしてみて、だいたい成功の見込みが60%から70%くらいの目標がいいであろう。これが最もやる気の出る目標である。