「高度に発達したAIは神と区別がつかない」
カーツワイルは、生粋のテクノロジー万能論者だ。AI研究の進化によって、人類は解放と幸福の未来へ向かっていると、信じて疑わない。
万能論者の声はほかにもある。
AI研究の第一人者で知られるワシントン大学のペドロ・ドミンゴスは、AIによる機械学習アルゴリズムの流派をわかりやすく分類。その組み合わせで、あらゆる問いや目的に最適解を出す「支配的アルゴリズム」をAI自身が生みだせる……つまり事実上のシンギュラリティに到達するはずだと唱えている。しかも、それは2045年よりも早いという。
また彼は、「高度に発達したAIは神と区別がつかない」と説いている。これはSF作家のアーサー・C・クラークの有名な「進歩した技術は魔法と区別がつかない」という言葉へのオマージュだろう。
ドミンゴスはこうも述べている。
「AIが反抗するのではないかと恐れる人々もいるが、その可能性はほとんどない。それよりも私たちがAIの自発的な制御を放棄してしまう可能性の方がよほど高い。AIの開発に際して、常にAIを制御する意識を捨てないことが必要だ」
名だたるAIの最高レベルの識者たちから、好意的な論が挙げられているのは、世界中の最先端の企業や研究者たちが、莫大な予算と時間をかけてAI研究を続けることの後押しとなっている。
「ロボット税」の必要性を説くビル・ゲイツ
しかし反面、否定的立場に立つ人がいるのも事実である。
代表的なのはマイクロソフト創業者ビル・ゲイツだ。もともと彼は「AIは危険である」という立場を取っている。その技術的能力は認めつつも、現段階以上の進化を遂げることを不安視していた。
ゲイツは2017年、米『クオーツ』誌のインタビューで、ロボット税の導入の必要性を説いた。働いて税金を支払っている人間がロボットに置き換えられたところに、同等の税金を課すべきだという。
人間の労働者に置き換わるAIロボットを運用している企業や自治体に、一定の課税負担をかけることで、AIの進化速度を抑制する狙いがあるという。その税収で人間のための職を新しく生みだすべきだと、ゲイツは述べた。
AIの進化よりも、人間へのケアの方が先だという意見なのだろう。