さらに言えば、与党にも非はある。それはもちろん、忖度うんぬんといった、レベルの低い議論についてではない。野党の的外れな批判を一蹴するのは簡単で、共通事業所の詳細データさえ公表すればよいわけだが、今のところそのような動きがみられない点が残念である。関係各者全員が各々の非を認め、本質的かつ建設的な議論が進展することを望んでやまない。
経済統計は、政府が経済政策を行う際や、民間が事業行う際、「意思決定」の根幹を形成するものだ。その意思決定の根拠となる計器が統計に当たる。計器が狂っているとなれば、大事故が発生してもおかしくない。
不祥事が相次ぐようであれば前提が揺らぐ
また、国外からの信認問題もある。日本国債の格付けや、海外投資家の日本市場への投資行動もやはり、統計の内容と信頼性をベースとしている。日本の統計は比較的信頼度が高い、との評価が一般的であったが、今回のような不祥事が相次ぐようであれば、その前提も揺らぎかねない。
記憶に新しいギリシャの財政危機も、財政関連の統計に不正処理が見つかったことが発端となった。こうした事態を避けるためにも、不正発覚を奇貨として、今度こそ聖域なき統計改革に踏み込むことが求められる。
小林 俊介(こばやし・しゅんすけ)
大和総研 エコノミスト
2007年東京大学経済学部卒業、大和総研入社。新興国経済・金融市場分析担当を経て、11年より海外大学院派遣留学。米コロンビア大学・英ロンドンスクールオブエコノミクスより修士号取得。13年より日本および世界の経済・金融市場分析を務める。
大和総研 エコノミスト
2007年東京大学経済学部卒業、大和総研入社。新興国経済・金融市場分析担当を経て、11年より海外大学院派遣留学。米コロンビア大学・英ロンドンスクールオブエコノミクスより修士号取得。13年より日本および世界の経済・金融市場分析を務める。
(写真=iStock.com)