いま世界経済はバブル崩壊の崖っぷちにある。そうした状況を招いたのは、パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長の失策だ。このためトランプ米大統領は、パウエル氏に政策転換を強く求めている。大和総研の小林俊介シニアエコノミストは「世界中の金融関係者が固唾を飲んで、8月23日のパウエル氏の講演に注目している。踏み込んだ利下げが早急に行われなければ、世界的な景気後退に直面するリスクが顕在化する」という——。
米国トランプ大統領による「異例の」FRB攻撃
2019年に入って、トランプ米大統領がパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長に対する「口撃」を強めている。米国ではこのように大統領が金融政策に注文をつけることは異例だ。また、その注文内容を単純化してしまえば「積極的に金融緩和を行って景気を刺激しろ、株価をつり上げろ」ということであるから、お世辞にも行儀のいいものではない。
また、トランプ氏のパブリックイメージも決していいとは言えない。このため、「金融政策に対する理解と敬意に欠ける政治家が、来年に控えた大統領選挙と議会選挙をにらんで即物的な政策を要求し、中央銀行の独立性を侵害している」といった見方は根強い。パウエル議長を「被害者」と見なし、同情的な視線を送る人たちは相当多いようだ。
しかし、そうした見方は早計だ。2018年2月の就任以来、たった1年半の間で、パウエル議長はあまりにも多くの失敗を繰り返してきたからだ。