銀行などの金融機関は期間の短い預金という形で資金を調達し、期間の長い貸出や債券(国債など)に投資して利益を得ている。通常状態では長期金利(債券・貸出)>短期金利(預金)となっているので利益が出るが、長期金利(債券・貸出)<短期金利(預金)=長短逆転すると運用利回りがマイナスになるため損失が出る。結果として貸し渋り・貸し剥がしが発生し、自己実現的に景気後退の局面に突入することになる。
(中略)米国の潜在成長率が1%台後半であること、そして米国のインフレ率に当面加速の兆しが見られないことを踏まえれば、2%台中盤という現在の長期金利はおおむね妥当な水準にあるように見える。
他方、新FRB議長であるパウエル氏がイエレン氏と同様に、金融市場の過熱を抑制することを主眼として金融政策を行うとすれば、政策金利であるFF金利(短期金利)は継続して淡々と引き上げられる公算が大きい。結果として、2019年頃には、FF金利が現在の10年債利回りに近い水準まで到達している、つまり長短の金利差がほとんどゼロになっている可能性が高い。

正しいのはトランプ大統領

まさに恐れていた事態が発生してしまった。そして景気後退を回避するための直接的な解決策は、大幅な利下げ(短期金利)により「逆イールド」を解消することだ。この文脈において、正しいのはトランプ大統領であり、誤っているのは利下げに消極的なパウエル議長である。今後の米国および世界の金融市場と経済の行方は、「トランプ大統領がどの程度強く、そして早く、パウエル議長を屈服させることができるか」にかかっていると言っても過言ではない。

もちろん、トランプ大統領にも非はある。とりわけ罪深いのは、イエレン前FRB議長を解任し、パウエル氏を後釜に指名したことだ。この点まで考慮に入れるとトランプ大統領に情状酌量の余地は存在しないし、どれだけ口汚くパウエル議長をののしったところで、悲しいかな、その言葉はブーメランのように大統領自身に突き刺さるのである。

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