GAFAに代表されるプラットフォーム企業の利益は、どこの国で課税されているのか。中央大学法科大学院の森信茂樹特任教授は「日本だけでなく世界中で法人税逃れをしているという指摘がある。最大では全世界で24兆円もの法人税が失われている。法制度の整備が急務だ」と指摘する――。

※本稿は、森信茂樹『デジタル経済と税』(日本経済新聞出版社)の一部を再編集したものです。

写真=ロイター/アフロ
GAFAはデジタル経済を牽引する革新的企業と、複雑な仕組みを活用し極力税金を払わない租税回避者の二つの顔を持っている。

われわれは、毎日のようにAmazon(アマゾン)で買い物をし、Google(グーグル)で検索し、Apple(アップル)で音楽を聴いています。それらなしでは通常の生活はできないほど、われわれの生活に浸透しています。

しかし彼らは、われわれ日本人を相手にビジネスをして収益を計上しながら、日本にほとんどと言っていいほど、法人税を納めていません。このような現象は日本だけではなく、欧州諸国やインド、中国といった新興国、さらには途上国でも生じています。

2015年にOECD(経済協力開発機構)が公表した試算によると、米国IT企業などが行う、無形資産のタックスヘイブン(租税回避地)への移転による国際的租税回避によって、全世界の法人税は、1000億~2400億ドル(1ドル100円で換算すると10兆~24兆円)も失われています。これは、全世界の法人税収の4~10%にも相当する巨額な金額になります。

「プラットフォーム」というビジネスモデルが出現

なぜこのようなことが起こっているか。その背景には経済のデジタル化=デジタル経済の存在があります。デジタル経済のもたらす大きな変化を挙げると、次の四つにまとめられます。

第1の変化は、モノからサービスへの転換です。デジタル経済の下では、モノの取引がデジタル財というサービスの取引(役務の提供)となります。例えばこれまで百科事典は、書籍というモノ(ハードウェア)でした。筆者が幼い頃は、多くの家庭に『ブリタニカ』『アメリカーナ』などの百科事典が、応接間に「飾り」としておいてありました。

しかしその後ブリタニカは、訪問販売部門を廃止し、CD-ROM取引になりました。さらに2006年からは、オンラインサービスになっています。知りたい物事を探すのに本を読むのではなく、インターネットで検索サービスを利用するように変化したわけです。これは百科事典という書籍・モノが、デジタルコンテンツ(無形資産・知的財産権)のオンラインサービスに転換したということを意味しています。

音楽の世界でも革命的な変化が生じてきました。これまでレコード盤、CDといったモノ形態で流通してきた音楽ですが、今は音楽コンテンツというデジタル財となり、インターネットでわれわれが入手するサービスになっています。