第2の変化は、「プラットフォーム」というビジネスモデルが出現したことです。プラットフォームというのは「基盤」とか、「場」を意味する言葉ですが、ITの世界では「多くの顧客向けに、さまざまな製品やサービスを展開する環境」というような意味で使われています。GAFA(グーグル、アマゾン、Facebook=フェイスブック、アップル)やネットフリックスを加えたFAANGは、米軍屈指のプラットフォームを運営する企業(プラットフォーマー)の略称です。

GAFAに代表される企業は、さまざまなサービスを、インターネット上のプラットフォームで供給するプラットフォーマーとして、多くの収益を生み出し、国境を越え、新たな経済フロンティアを広げ、世界経済を牽引する存在になっています。

ビッグデータは現代の「原油」

第3の変化は、企業価値が「無形資産」に転化したことです。デジタル財・コンテンツの本質は、著作権や特許権などの無形資産です。さらにはGAFAが価値を生み出しているビジネスモデル自体無形資産です。つまりデジタル経済の下では、企業価値は無形資産によって成り立ち、集積されるということです。

しかし、無形資産ほどその価値を適正に評価するのが難しいものはありません。会社内部で形成され関連会社間で取引されるので、第三者的な比較対象取引はありません。また、取引時点において、ある無形資産が将来どの程度の所得を生み出すかについての確たる予測は、当事者ですら困難でしょう。価値の評価が難しいということは、課税上大きな問題を生じさせます。

無形資産にはこのような特徴がある上、権利の移転が容易なので、低税率国やタックスヘイブンにある関連会社などに移転することにより、租税が回避できるということにもなります。そこでOECDで長年、無形資産についてはグループ内部の取引であっても、独立企業間で取引する際の価格(独立企業間価格)を適用することを原則とする移転価格税制として議論の積み重ねが行われてきました。しかし未だ、この問題は解決されておらず、今後とも税務当局間、さらに企業との間でさまざまな議論が行われていくと考えられます。

4番目の変更は、ビッグデータの存在です。デジタル経済の下で価値を生み出す無形資産の基礎となるのは「ビッグデータ」です。これまではデータの分析では原因と結果の「因果関係」を求める作業が重要でしたが、今は、一方が変化すれば他方も変化する関係である「相関関係」を求めることが重要になっています。「膨大な電子カルテのデータから、オレンジジュースとアスピリンの組み合わせで癌が治ることが言えるなら、正確な理由はどうあれ、この組み合わせが癌に効くという事実のほうがはるかに重要となる」(マイヤー=ショーンベルガー他『ビッグデータの正体』)のです。