英エコノミスト誌(2017年5月6日号)は、“Data is giving rise to a new economy”という特集の中で、ビッグデータを石油の埋蔵量と同様と表現し、ビッグデータの流入は、新たなインフラであり、新たなビジネスであり、新たな独占であり、新たな政治であり、新たな経済であると評しています。とりわけ、データ解析の質が向上したことから、人々の年齢・性別・所得などがリアルタイムで把握でき、SNSを通じて写真やビデオまで紐付けられ、これから世界は全てセンサーでつながること、さらにはそのような進歩により日々データの価値は上昇し、AIを活用することによりターゲット広告をはじめ、さまざまな認識サービスに活用され、新たな収益源となっていることが述べられています。

ウーバーも電気自動車メーカーのテスラも、企業価値はそのビジネスモデルというより、保有しているビッグデータにあるとも述べています。ビッグデータは今日「新たな富」と呼ぶにふさわしい存在になったと言えるでしょう。

消費者の住む国の政府に課税されずにビジネスが可能に

経済のデジタル化は、課税、とりわけ国際課税の世界に大きな変化をもたらしています。

第1に、国境を越えてビジネスを行う場合、現地に支店などの物理的な存在を設けなくても、規模拡大することが可能になりました。これまで日本の消費者を相手にモノを販売しようと思えば、日本に支店や事務所を設けてビジネスを行う必要があったので、それらの拠点を通じて日本政府の課税権に取り込むことが可能でした。この拠点のことを税務では恒久的施設(PE=Permanent Establishment)とよびます。

しかし、デジタル経済の下では、企業はサービスを提供する消費者が住む消費国(源泉地国)に、課税権の根拠となるPEを置かなくても、ビジネスをすることが可能になりました。つまり、消費者の住む国の政府に課税されることなく、国境を越えるビジネスで利益を上げることができるようになったということです。アマゾンのように「日本人相手に、日本で仕入れた商品を販売しながら、日本国には法人税を納付しない」というビジネスモデルが可能になったのです。

どこの国でも課税されない巨大プラットフォーム企業

2番目は、価値の創造された地と納税地の乖離という問題です。この問題は企業価値の無形資産化とも深く関連しています。

デジタル経済における価値は、どこから生まれるのでしょうか。当然、先進的なビジネスモデルやそれを無形資産化した企業から生じているので、現在の国際課税のルールでは、企業の居住地、分かりやすく言えば本社があるところに生じると考えていいでしょう。そして支店や工場(PE)が消費国にあれば、消費国はそこに帰属する利益に対して税金を持つことになります。

デジタル経済の下では、その価値の中核である無形資産を低税率国やタックスヘイブンに移転させ、そこに所得を集中させて租税を回避することが可能になります。無形資産は法的な権利なので、関連企業間での移転は容易で、その結果、無形資産の開発をもたらした場所と、法的所有権の存在する場所とが容易に分離されることになります。こうして価値創造地と納税地の乖離が生じるのです。