価値創造地と納税地の乖離が生む「二重非課税問題」

一方で、GAFAのビジネスモデルを見ていると、ユーザーが居住する「消費国」から大量のデータを集めることから成り立っています。ユーザーを提供するデータがなければ、ユーザーも新たなサービスを受けることができないという相互依存関係が構築されており、ユーザーもそのビジネスモデルに組み込まれている、何らかの価値創造に貢献しているとも考えられるのです。ユーザーが参加することでシナジー効果を高めているわけで、ネットワーク効果と言われます。

森信 茂樹『デジタル経済と税』(日本経済新聞出版社)

つまり企業価値の一部はユーザーが提供するデータなので、その価値がどこに帰属するのかという議論では、ユーザーやその居住する国にも価値の一部が帰属する、と考えられるわけです。この問題はデジタル経済の下で発達したビッグデータの価値は、どこに帰属するのかという、富を巡る新たな争いと表現することができます。それが「税の帰属と税収の配分」という最も厄介な問題を生じさせているのです。

このように、価値創造地と納税地が乖離してまった結果、GAFAに代表されるプラットフォーム企業の利益が、どこの国(税の用語で言えば法人の居住地国と、利益を上げている消費国)でも課税されない、あるいは極めて低い税率でしか課税されないという状況が作り出されています。これが「二重非課税問題」と呼ばれているのです。

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