PETでは映らないがんが、たくさんある
日本では様々ながん検診が行われている。中でも、1度の検査でほぼ全身を診ることができるとされるPET検査は一見、魅力的に見える。
「そもそもPET検診は自由診療です。かつて数十万円はしたPET検査も、最近は10万円前後で受けられるようになりました。ただし、小さながんもわかる、1度で全身のがんが見つかるというのは迷信です。PETでは映らないがんがたくさんあるからです。大きな進行胃がんでもPETでは映らないことがあり、胃カメラではじめて見つかった事例もあります」(同)
ではPET検査を受けても意味がないということか。
「そもそもPET検査は、がんの進行度や転移の有無、治療後の再発の有無を見極めるための方法なんです。そのためには有効です。ただ、PET検査の放射線被ばく量は少なくありません。毎年受け続けたら、むしろがんをつくることになるかもしれません。ですから単独のがん検診としてはお勧めしていないのです」(同)
ところで、人間ドックの検査結果により、精密検査を勧められることも当然ある。だが、精密検査をしてみたら『異常なし』という経験を持つ人も少なくないだろう。
「人間ドックを受けること自体が、ストレスになる場合があります。すると本当は病気でもないのに、そのストレスが検査結果に反映され、濡れ衣を着せられるというわけです。それで怒る人もいますが、人間ドックとはそもそも、『これはちょっとおかしい』という部分をとりあえず引っかけることが目的。そこは十分に理解して活用してほしいですね」(同)
結論:同じ値段ならバリウム検査より胃カメラがいい
長尾和宏
医師、長尾クリニック院長
1984年東京医科大学卒業、大阪大学第二内科入局。95年長尾クリニック開業。日本消化器病学会専門医、日本消化器内視鏡学会専門医、指導医。『その医者のかかり方は損です』など著書多数。
医師、長尾クリニック院長
1984年東京医科大学卒業、大阪大学第二内科入局。95年長尾クリニック開業。日本消化器病学会専門医、日本消化器内視鏡学会専門医、指導医。『その医者のかかり方は損です』など著書多数。
(撮影=永井 浩 写真=iStock.com)