株価が永久に上昇し続けることはありえない。2000年に入ると高値警戒感から米国のIT株価は伸び悩んだ。同年9月にはインテルの決算が予想を下回ったこと(インテルショック)によりITバブルは崩壊し、多くの投資家が莫大な損失に直面した。

バフェット氏は、ITバブルの崩壊による損失を回避できた。理由は、同氏がドットコム企業の経営実態に疑問を抱いたからだ。周囲が大挙して株を買い始めると、つられてしまいがちだ。バフェット氏はその状況を忍耐でしのぎ、納得できるものをより有利な価格で手に入れることにこだわった。その姿勢には見習うべき点が多い。

我慢しきれずに高値掴みをしてしまった

2018年通期のバークシャー決算を見ると、バフェット氏および同社経営陣は近年の世界経済の動きについていくのが難しくなっているように思える。従来のように、買い時をじっくりと待つのではなく、バフェット氏は我慢しきれずに高値掴みをしてしまったといえばわかりやすいだろう。

バークシャーがアップルの株式を取得したのは、それを考える良い例だ。2016年1~3月期、バークシャーはアップル株に初めて投資し、発行済み株式の0.2%を取得した。その理由は、バフェット氏がiPhoneの革新性に気づいたからだろう。同氏は、ネットワーク・テクノロジーの高度化と実用化が進むにつれて、アップルの成長が実現する展開を期待した。

ただ、この判断は遅すぎた。すでにアップルの成長には陰りが出始めていた。それ以降、アップルのiPhoneより安い中国製スマホがシェアを伸ばしている。特に、新興国では中国製スマホのシェアが圧倒的だ。アップルはiPhoneの単価引き上げで収益の減少を食い止めようとしてきたが、業況は厳しい。

変化に気づき、適応するのが遅れた

その後、カネ余り環境の中で米国株式市場に資金が流入し、昨年10月初旬までIT先端企業を中心に株価は大きく上昇した。株価が上昇する中で、バークシャーはアップル株を買い増した。

従来のバフェット氏であれば、こうした投資行動をとることは考えづらかった。いつの間にか、バフェット氏の“よい企業(競争力あるブランド多く持つ企業)を適切な価格で買う”という投資哲学は変節し、買うから上がる、上がるから買うという相場の熱狂に振り回されてしまったように思う。

バークシャーの損失につながったクラフト・ハインツ株に関して、バフェット氏はリスクを十分に理解できていなかったようだ。人々の健康意識が高まり、価格の安い大量生産型の加工食品よりも、多少値が張るが品質が良い自然食品への需要が高まっている。

バフェット氏は依然としてクラフト株を好んでいるが、同氏は筆頭株主として企業に新しい取り組みを求めてはいない。結果的にみると、バフェット氏は変化に気づき、適応するのが遅れたといえる。