がんの新薬開発でわかる日本の製薬企業の国際競争劣位

論理的に考えると日本でも合従連衡が起こって当然といえる。だが、薬価の低下も競争力のない企業を倒産させるほど激烈なものではない、ぬるま湯環境が維持されているため、経営者たちは合従連衡の必要性を感じていないように見える。結果、国際的にみると現状の地位すら維持するのが危うく、国際的競争で劣後する可能性が高い。

その兆候はすでにがん領域で顕著である。オプジーボに代表されるがん免疫療法は5陣営(ブリストル/小野薬品、米メルク、ロシュ、アストラゼネカ、ファイザー/独メルク)がしのぎを削っている。小野薬品はブリストルに従う格好で、5陣営に日本の製薬会社が意義深く関与していないことは大変残念だ。他にも、最近市場で話題になっている革新的な抗がん剤に日本企業は関与できていない。

製薬産業は最先端の科学技術を患者への価値に変え、それを収益化するとても重要な産業だ。非資源国であり科学技術水準が高い日本にとって、海外で収益を上げ、日本で納税するグローバル製薬会社は国益にもかなう。製薬産業が国際競争力を失えば、日本経済にとっては付加価値の高い知的産業を失うことになる。また新薬を海外に頼れば、国民にとってはコスト高になるリスクにも遭遇することになる。

関篤史(せき・あつし)
UBS証券 調査本部 バイオ医薬品セクター エグゼクティブ・ディレクター
東京大学大学院薬学系研究科修士課程終了、日本学術振興会特別研究員(DC1)を経て2009年バークレイズ証券入社、2016年より現職。2018年Institutional Investorsアナリストランキングヘルスケア&医薬品セクターで2位。経済産業省「伊藤レポート」「同2.0バイオメディカル産業版」委員。薬剤師。
(写真=時事通信フォト)
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