2019年度からは、医療経済的な効率を精査する費用対効果評価も導入されることが決定し、効率が悪い医薬品の薬価が下げられてしまう。米国では、トランプ大統領がツイッターで医薬品価格を下げると頻繁にツイートしている。

世界レベルの研究開発費30億ドル確保は武田薬品だけ

製薬会社は新薬開発がその命運を握る典型的な研究開発型の企業だ。我々は製薬会社がグローバルに競争するには、最低でも30億ドル程度の研究開発費が必要と考える(図表)。研究開発費を捻出するには、利益を増やす、コストを下げる、M&Aを行うといった手段しかない。

製薬産業全般を見ると、いかに研究開発費を捻出するかの知恵比べが起こっているように見える。多くの製薬会社は無借金経営で現金を豊富に有し投資余力はあるが、研究開発費を積み増せば、損益計算書を痛め利益率を低下させると投資家から批判される。経営者の本音は、株主から不満が出ない程度に使えるだけ使いたい、というところだろう。

グローバル大手は売上収益のおおよそ15%を研究開発に投入するが、日本企業は20%程度と比率では上回るが、金額は小さく、新薬創出対比でみると効率が良いとは言いにくい。

日本には30億ドル以上の研究開発費を持つ企業は武田薬品しかない。我々は武田薬品のシャイアー買収提案は、株主にとって魅力的なものと判断しており、武田薬品がグローバル企業と競争するために必要な案件と考える。

武田薬品はシャイアー買収により研究開発費は単純合算で約1.6倍の5200億円規模となり、コストシナジー(約700億円)を考慮すれば真水ではさらに投資が可能になる。その一方で、研究開発費対売上高比率は18%から14%へ低下する。

売上では業界第5位のエーザイは約13億ドル(対売上高比率23%)を研究開発に投下している。一見小さく見えるがパートナーからの研究開発費償還という革新的なスキームを考案した。パートナーからの支払いを研究開発費のマイナスとして会計処理することで、売上収益の約30%を研究開発費に実質的に投入しつつ、株主利益へのバランスに配慮している。

我々はロシュ/中外製薬の戦略的提携は、中外は売り手側ではあるものの日本製薬産業で最も成功したM&Aであると考えており、中外はロシュの豊富なリソース(年間1.1兆円もの研究開発費)へアクセスができ、研究開発に集中できる環境を整え、数多くの成果を生み出している。

中外は関節リウマチ、特定の遺伝子変異を有する非小細胞肺がん、血友病といった革新的な薬剤を創出し、ロシュに大きく貢献している。日本の製薬会社として最も多い米FDA(食品医薬品局)の画期的医薬指定7件を受けている。ちなみに武田薬品は2件、アステラスは1件しか獲得できていない。