「空白地帯」を前提にしないと管理不能になる

組織が有効に機能するうえでの注意事項はいろいろあるが、そのひとつに組織には管理限界(スパン・オブ・コントロール)があるということがいえる。それを前提に考慮しておかないと、そこが落とし穴になることがある。

かつて、MTP(管理者訓練計画)では、「管理限界」という用語があり、監理者が部下を管理する人数は6人から9人が限界だと言われた。が、今日の環境下では、単なる部下の人数ではなく、もっと広く捉える必要がある。

今日の管理限界とは管理と管理のはざま(空白地帯)とも言える。時間・距離・国・習慣・宗教・人種・広さ・特殊な知識・特殊な技術・文化・歴史・言語などなど、ますます国際化、多様性が進んだ会社組織では、こういった空白地帯を前提にしないといわゆる「壁」ができ、管理不能要因となる。

「人事は掃除屋でもある」

また、過度なトップダウン、極度のコストカット、特殊な部署、過度な分業、長いベテラン担当者や過度の異動、従業員のモラル低下、士気低下なども広義の管理不能要因となりうる。そこには縦横なコミュニケーションがなく、腐敗・不正・事なかれ主義の温床となる。

その結果、組織生命が絶たれるような事件がおきることは昨今の企業不祥事をみてもわかることである。組織編制にはそのことをあらかじめ予見して、牽制制度(チェック機能)を組み込んでおく必要がある。もしくは、監査機能の強化を行う。

小嶋は、清潔を望む心、腐敗を忌み嫌う心を大切にしたいという。

「人事は掃除屋でもある」という。

この言葉は組織や人間の負の部分を知り尽くした者しか言えない言葉である。「光と陰のいずれの部分に対しても、方針を明らかにし、具体的な運用をすることで企業の良き風土がつくられるのである」