海外投資家が日本株を「見限った」理由

だが、2015年以降、海外投資家は慎重姿勢を強めてきた。2016年には3兆6887億円を売り越した。アベノミクスへの期待がはげ、「やはり日本は変わらない」といった諦めに似た見方が海外投資家に広がったのだ。2018年はほぼ一貫して売り越したが、秋以降は売り姿勢を強めた。

なぜ、海外投資家は日本株を「見限り」、それ以降も本格的に買いに入って来ないのだろうか。

通常国会で野党の最大の攻撃材料になっている「毎月勤労統計」の調査不正問題がボディーブローのように効いている。不正が始まった段階ではおそらく罪の意識がなく、ケアレスミスだったに違いない。だが、問題に気付いて以降、内部で勝手に修正をし、問題を糊塗しようとしていた疑いが強まっている。また、問題が発覚した後の検証や調査も極めて杜撰で、当事者のヒアリングに外部者がひとりも立ち会っていなかったことなどが次々に明るみに出ている。

政府は、過去から続いたミスだとして早々の幕引きを図っているが、問題を矮小化して早期に決着しようという姿勢がミエミエである。

日本の調査統計への信用が大きく揺らいでいる

海外投資家が首をひねるのが、毎月勤労統計の中で調査されてきた「賃金」の実態。安倍首相は就任以降「経済好循環」を掲げて財界首脳に「賃上げ」を求めてきた。為替が円安に振れたことで企業収益が大幅に改善したが、それが給与の増加につながり、さらに消費へと結びつくことが重要だと強調していたのだ。ところが、毎月勤労統計調査の不正によって、2018年の実質賃金は本当に上昇していたのか、実態がよく分からなくなっているのだ。

少なくとも2018年6月の公表結果で3.3%としていた賃金上昇率は、実際には2.8%だったことが現段階で明らかになっており、それもサンプル入れ替えの影響が大きいことが国会審議などで明らかになっている。アベノミクスの「成果」として強調されていたことが、実は、統計手法の不正や調査対象の入れ替えによって出来上がっていたのではないか、という不信感が強まっている。野党は「アベノミクス偽装」だと批判を強めている。

安倍首相は調査結果をコントロールすることは無理だとしているが、日本の調査統計に対する世界の信用が大きく揺らいでいることは間違いない。