多難な時期で、国岡の生き方に共感
私自身、国岡の生き方と自分の生き方を重ね合わせて、共感したシーンがありました。この本を読んだ12年の夏は、ちょうど当社も多難な時期でした。私が社長として陣頭指揮を執った経営再建がようやく軌道に乗りかけた矢先に、海外子会社の不祥事が発覚して企業の存在意義を問われたのです。
私は若いときに営業を担当していた金融機関のトップの「泣くな、逃げるな、ウソをつくな」という言葉が心に刺さり、以来それを自分にも周囲の者にも言い聞かせてきました。そして『海賊とよばれた男』に描かれた国岡の不屈の生き方や社会・国家に尽くすという信条を通じて、改めてその言葉を思い起こし、当社の信頼回復に全力を注ぐ覚悟を固めることができました。
私の読書術の基本は「面白そう」と思った本があったら読んでみることです。知識が増えるだけでなく、思考の幅が広がり、判断力も養われます。当社には、私が100冊ほどの蔵書を持ち込んだ「川崎文庫」があります。社員に本に親しんでもらうためなのですが、本について膝を突き合わせながら、楽しく語り合いたいという密かな願いも込められているのです。
川崎秀一(かわさき・ひでいち)
沖電気工業 取締役会長
1947年生まれ。70年早稲田大学法学部卒業後、沖電気工業に入社。2009年代表取締役社長執行役員に。16年代表取締役会長となり、18年6月より現職。
沖電気工業 取締役会長
1947年生まれ。70年早稲田大学法学部卒業後、沖電気工業に入社。2009年代表取締役社長執行役員に。16年代表取締役会長となり、18年6月より現職。
(構成=野澤正毅 撮影=石橋素幸)