新卒学生の40%が大企業から閉め出される
ちなみにリクルートワークス研究所の「中途採用実態調査」(2017年度実績)によると、従業員5000人以上の新卒採用比率(2018年卒)は62.6%、中途採用比率は37.4%。1社あたりの採用人数は新卒128人、中途76人だ。
少なくとも新卒と中途の採用比率を逆転させなければ政府が狙う労働市場へのインパクトは小さいだろう。そうなると新卒学生の40%(52人減)が大企業から閉め出されることになる。
だが、新卒重視の採用は企業にとってそれほど問題がある仕組みなのだろうか。
事業を推進する現場の管理職や幹部は即戦力となる中途採用を欲しがる傾向がある。とくに外資系企業は中途採用が主流だと言われる。しかし、意外なことに外資系企業でも「新卒は重要だ」と指摘する声も少なくないのだ。
国内企業とは真逆 外資系が新卒採用に積極的なワケ
外資系のグローバルIT企業の元アジア地区の人事責任者はこう語る。
「日本における新卒か中途採用かの議論はナンセンスだと思います。グローバル先進企業はもちろん中途も採っていますが、新卒も重視している。その理由の1つは中・長期的に見て、新卒はコストが安いということです。たとえば中途でマネージャークラスを採用しようとすれば、市場価値が高いので割高です。もちろん新卒は内部で育成し、外部の研修を受けさせるなど、それなりのコストもかかりますが、コスト全体で比較すれば中途採用よりも安いのです。そのことに気づいたのはアジア地区の人事責任者のときです。日本に新卒採用という定着した良い仕組みがあるのであれば、中途採用を抑えて新卒を採れ、と指示しました」
中途採用よりも新卒のコストが安いというのは意外な話だ。本当にそうなのか。日本では業種に関係なく新卒の基本給は約20万円。初年度のボーナスは4月入社なので夏が低く、年末のボーナス合計を合計しても3カ月ぐらいだろう。そうすると初年度の基本年収は約300万円だ。
では中途採用はいくら払っているのか。外資系IT企業の年収に詳しい人材コンサルタントはこう語る。
「30歳のSE(システムエンジニア)だと700万円ぐらいで転職しています。営業をサポートするプリセールスエンジニアは35歳で900万円以上、プロジェクトマネージャークラスになると1000万円を超えます。外資系大手になるとさらに高くなるのが普通です」
30歳のSEで新卒の2倍超、35歳のプロジェクトマネージャーで3倍超になり、年収ベースでも新卒は“お買い得”と言えるかもしれない。