薬に頼りすぎれば、「耐性ウイルス」を生むリスク増す

次に1月27日付の産経新聞の社説(主張)を読んでみよう。

産経社説も新薬の問題を取り上げている。

「新薬が登場し、治療薬の選択肢が広がっている。薬を飲めば、発熱期間を1、2日程度短縮する効果がある」
「基本は水分を取り、暖かくして休むことである。薬に頼りすぎれば、薬の効かない『耐性ウイルス』を生むリスクも増す」
「むしろ、これを休息の機会と捉えてほしい」

読売社説ほどではないが、耐性ウイルスを問題にしている。

産経社説は「薬に頼りすぎれば」と書くが、難しいのは治療薬を服用すべき患者とそうでない患者を見分けることと、服用するタイミングである。

高熱が出ても体力のある若い人なら水分と栄養、それに睡眠を十分とって休んでいれば回復する。

抵抗力が弱くなっている高齢者や抵抗力のない幼児の場合は、そうはいかない。高熱を出す前に処方された薬で治療する必要がある。高熱で体が衰退したり、脳症を引き起こしたりする危険があるからだ。

それにタミフルなどの抗インフルエンザウイルス薬は、熱が上がる前に服用しないと効果がない。高熱が出るということは、それだけウイルスが増えているわけで、ウイルス量が少ないうちにたたくのが原則だ。

問題は「治癒証明」を求める会社や学校にある

産経社説はこんなことを書く。

「回復後、『治癒証明』を求める職場もある。ただし、治ったことを証明する検査はない。混雑する医療機関に行けば、別の感染症を拾うかもしれず、医療現場の負担も増す。混乱が広がらないよう知恵を絞る必要がある」

「治ったことを証明する検査はない」と指摘するが、間違っていないか。

産経社説が中盤で「インフルエンザは、ウイルスで発症する。38度以上の急な発熱や頭痛、関節や筋肉の痛み、倦怠感などが表れる」と書いているようにこうした症状がなくなれば、治ったことになる。通常、大人だと、解熱後2日もすれば、体内からウイルスが消えて他人にうつさなくなる。

患者本人が治ったと自覚し、医師の診察でそれが確認されれば問題はないはずだ。簡易検査キットを使って咽頭ぬぐい液を採取し、インフルエンザウイルスの有無を調べることだってできる。

問題は治癒証明を求める会社や学校にある。回復しているのに治癒証明をもらいにまた病院に行けば、診察料や証明書の作成料などがかかり、医療保険財政を圧迫する。病院も仕事が増える。そこは産経社説が指摘するように知恵を絞る必要があるだろう。

(写真=時事通信フォト)
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