一時金ゼロなら、月額利用料が高い
高齢者施設に入居する際の契約形態や利用料の支払い方式は、施設によって違う。有料老人ホームの多くは「利用権方式」契約で、入居時にまず一時金(前払い金)を支払い、終身にわたり居室と共用施設を利用する権利と介護や生活支援サービスを受ける権利が保障される。サ高住では、住宅部分は「賃貸借方式」で契約を結び、さらに別に「サービス利用契約」を結ぶ。シニア向けマンションは、不動産売買契約を行い、入居者は「所有権」を持つ。
有料老人ホームの利用権は、所有権とも不動産の賃借権とも異なることに注意が必要だ。たとえば何らかのトラブルが発生した場合、施設側から契約解除を告げられ退去しなければならない場合もある。また、入居中に事業主体が変わったら契約内容は必ずしも継承されないし、利用権は譲渡や相続、転売ができない。
その点、サ高住は賃貸借なので、一般の賃貸住宅と同じく借地借家法で入居者の権利が守られているから、事業者側の都合で退去させられることはないし、経営者が変わっても契約は継承される。シニア向けマンションは、所有権を持っているから、転売も相続も可能。
有料老人ホームの場合、かかるお金は、入居一時金(前払い金)と毎月の利用料(居住費)、それに食費と日常生活費の実費部分だ。介護が必要になった場合は、これに介護費が加わる。太田さんによれば「入居一時金は、数百万円から数千万円まで開きがあります。契約の際には、入居一時金のうち初期償却が何%で、償却期間が何年になっているのか、途中で退去したらどのくらい戻ってくるのか、こないのかなどを確認しましょう」。
見逃せないのが、有料老人ホームには事業者の倒産リスクもあるということだ。「一時金の未償却部分の保全といった消費者保護の仕組みはありますが、入居者には利用権しかないから相続・転売ができない。トラブルを避けるため、事前に事業者の財務諸表を確認しておくことをおすすめします」(田中さん)。
一時金の返金トラブルが相次いだことから「一時金ゼロ」という施設も増えているが、その分、月払い部分は高額化している。最近では、「一部前払い・一部月払い方式」のバランスを変えたコースがいくつか用意されていて、そのなかから選べる施設が増えている。