もうひとつ大事なことは、家族や友人が来やすい場所にあるかどうか。

「以前なら月に1回は会っていたのに、お盆と暮れくらいしか会えなくなると、本人に覇気がなくなってしまいます」(田中さん)

「夫婦で入居」は現実的か?

深刻だが、見落とすことのできない点も指摘しておきたい。「施設に入るときは、たとえ今は元気でも『将来、介護が必要になったらどうするか?』を考えておかなくてはなりません」と太田さん。

介護付き施設がそばにある、グループ会社が介護付き施設を経営していてすぐに移れる、現在居住中の施設で介護が受けられるなどを想定しておいたほうがいい。太田さんによれば「住宅型の有料老人ホームでは、親しい居住者に要介護になっていく姿を見られるのがイヤだから、という理由で別の施設に移る人がいます。また、介護型の施設が同じ敷地内にあっても、移ったのを知られるとプライドが傷つくというケースもあって複雑です」。

夫婦単位での入居を考えている人も多いだろう。が、それはあまり現実的とはいえない、というのが太田さんの意見である。

「夫婦入居では、別々の部屋へ入るより2人部屋のほうが費用は抑えられます。ただ、自宅よりも狭くなった部屋で夫婦が顔を突き合わせていると、夫婦仲が決定的に悪くなることがあります」。また、片方が要介護状態になったときのことも想定しておかなくてはならない。有料老人ホームでは常に介護スタッフの手があるわけではないので、夜間などに自分が配偶者の介護をするはめになるかもしれないのだ。

入りたい施設を探す手がかりはどんなところにあるのだろうか。

「多いのは、今住んでいるところの近くか出身地。転勤で住んでよかった地域を選ぶ人もいます。なじみがあってもう1回戻りたいと思っていた場所ですね。男性では、出身大学の近くで探す方、農業をやりたいからとIターンする人もいます。都心から離れると価格が安く物件が広くなります」(太田さん)