ざわめきの中で「自分の名前」だけが聞こえる理由

大勢が雑談しているザワザワした状況なのに「自分の名前が入った会話だけが突然聞こえた」という経験はありませんか? これは、イギリスの心理学者コリン・チェリーが提唱した「カクテルパーティー効果」と呼ばれる心理メカニズムです。

チェリーが行った実験をご紹介しましょう。

1.被験者にヘッドホンをさせる
2.ヘッドホンの左右で違う内容を流す
3.話に集中する側を指定する

この実験の結果、被験者は集中するように指定した側から流れてくる情報はよく理解していた反面、反対側から流れてきた情報はほぼ記憶に残っていないことがわかりました。次にチェリーはこんな実験をしました。

1.先ほどと同じように被験者にヘッドホンをさせ、ヘッドホンの左右で違う内容を流す
2.話に集中する側を指定する
3.ただし今度は、集中しない側の音源に被験者の名前を呼ぶ音声を入れる

この実験結果は大変興味深いものでした。集中していない側で自分の名前が呼ばれるとそちらに集中が移り、その(集中しろと指定されていない側の)情報を覚えてしまったのです。

相手の名前を呼ぶと印象が良くなる

またアメリカでは、男女に15分間会話をさせ、相手の名前を呼んだ場合と呼ばなかった場合で印象がどう変わるか、という実験も行われています。結果は、名前を呼んだ時のほうが「フレンドリー」「社交的」「もう一度会ってみたい」など相手に対して好印象を持った、となりました。

実験から分かるのは、「人は自分の名前を呼ばれると自動反応的に意識がそちらに向く」ということ、そして「会話に相手の名前を入れて話したほうが相手にいい印象を持ってもらいやすい」ということです。

実際私は、コールセンターに電話するときは、必ず相手の名前を言うようにしています。具体的には以下の感じです。

【コールセンター】「お電話ありがとうございます。山田が承ります」
【自分】「山田さんですね、よろしくお願いいたします。実は山田さん、~(以下、用件を言う)」

コールセンターってなにかとクールな対応をされることが多いもの。ところがこうして相手の名前を入れると、びっくりするくらい親身になってくれるのです。やって損はないと思いますので、ぜひ試してみてください。