初対面の印象をよくするコツはあるのか。カナダの心理学者がアゴの角度と印象の変化を調べたところ、最も印象がいいのは「20度上向き」だったという。また、会話の中で相手の名前を呼ぶと、「もう一度会ってみたい」と思われやすくなるという実験結果もある。好印象を与えられるテクニックを紹介しよう――。

※本稿は、岸 正龍『相手に響く伝え方 人生を変える心理スキル99』(きこ書房)の一部を再編集したものです。

初対面の印象は「7秒」で決まる

※写真はイメージです。(写真=iStock.com/Bojan89)

人の印象は、初対面の場合は7秒で決まると言われます。この初対面の印象を軽々しく考えることはやめてください。いったん、印象が決まると、その後は自分が持った印象が正しいことを証明する情報ばかりを無意識に拾い上げるからです。最初に示された特性が記憶に残り、その後の印象を強く左右することを「初頭効果」といいます。

たとえば、ある人が相手に対して「だらしない」という印象を持ったとしましょう。するとその後は相手がどんな言動をしても「やっぱりここがだらしない」と、自分の最初の印象を裏付ける部分に目がいくようになってしまうのです。それも、無意識のうちに(これは「根本的な帰属の誤り」「対応バイアス」とも呼ばれます)。

初頭効果を唱えたのはアメリカの心理学者ソロモン・エリオット・アッシュで、以下のような実験を行いました。

1.被験者をA、B、2つのグループに分ける
2.それぞれのグループに、同じ人物の特徴を単語で伝える
3.その際、伝える順番を以下のように変える

【Aグループ】知的→勤勉→衝動的→批判的→頑固→嫉妬深い
【Bグループ】嫉妬深い→頑固→批判的→衝動的→勤勉→知的

4.その人物の印象に違いが出るかを分析する

ご覧の通り、それぞれのグループに示された単語はまったく同じで、ただ順番を逆にしただけです。ところが、両グループのこの人物への印象は大きく違いました。Aグループの方があきらかに良い印象を持ち「この人物を好意的に受け入れる」という結果になったのです。

「相手からどう見られたいか」を考えよう

アッシュの実験からもわかるように、誰かと初めて会う場合には、第一印象に気をつけることが大切です。――といっても、自分が考える「キレイな格好」をして、「明るくハキハキ」話せばOKというわけではありません。

まず「相手からどんな印象を持たれたら効果的か」を考えてください。

私は自身の経営する眼鏡ブランドの代表者としてどなたかと会う場合は、金髪を隠しません(はい、私、金髪なのです)。タトゥ柄の入った洋服をザックバランに着て、無精髭を蓄えていることもあります。そしてもちろん、自社ブランドの眼鏡をかけます。

なぜこんなくだけた格好をするのかというと、私のやっている眼鏡ブランドの雰囲気にはこの格好が合っているからです。自分のところで作っている眼鏡を一番魅力的に見せる装いを選んでいるのです。

一方、心理テクニックを日常に活かす講師としての私は、髭を剃り、スーツを着てネクタイを締め、金髪もあまり目立たないよう帽子をかぶります。言うまでもなく、この格好の方が講師としての初頭効果が有効に働くからです。

自分がどんな格好をしたいかという「自分軸発想」ではなく、その時の相手にとって自分がどう見えたら効果的かを考える「相手軸発想」、まずはこれをしっかり身につけるように心がけてください。