大切なものから、人生観を探る

順天堂大では、1次試験時に記入した小論文と組み合わせて、個人面接を実施。小論文では、提示された絵や写真などをみて思うことを自由に述べる。「10人いれば10人が異なった考えをもつ。何に気づき、どう表現するのかを文章にすることで受験生の人間性が表れる」(代田医学部長)ことを狙う。

また、メダルや賞状、小学校以降の成績表など力を入れた活動に関する資料を持参させ、それをテーマに面接するのも順天堂大の2次試験の特色だ。1人の面接時間は20~30分で、じっくり話に耳を傾ける。「大切にしてきたものについて語ってもらうと、行動の根幹をなす考え方、人生観に触れることができ、志望動機以上に人物理解につながる」と代田医学部長。

同校のアドミッションポリシーでは、学生に求めるものとして、(1)思いやり・倫理観、(2)コミュニケーション能力、(3)アクティブラーニング能力、(4)医学貢献に関しての国際的視点、(5)たゆみない自己研鑽の意欲が挙がっているので、こういった点を2次試験で評価していると予測される。

1次試験の点数がベースとなり、プラスアルファで小論文と面接で知性、感性、教養といった人間性を測り、最終合格が決定される。

さまざまな話をまとめると、面接試験の評価基準には、(1)人の心を読み取ったり、相手の立場になって考える力、そこからもたらされる思いやり・優しさ、(2)コミュニケーション力、(3)主体的に問題を発見し解決する力、(4)学習継続力、(5)ストレス耐久性・回復力、(6)倫理観などが挙がってくる。

医師に必要なのは、「心身共に弱っている患者の立場に立って考えられる思いやりと、難しくなりがちな病気の説明を患者にわかる言葉で伝えられる力」(細川会長)や、「毎年新薬の効果が検証され、がんの標準治療は次々に刷新されていく。一夜にして“治療の常識”が変わることがあるので、一生勉強し続ける姿勢は大切。どんなに医学が進んでも、残された時間が少ないことを伝えざるをえない場面はでてくる。患者や家族にどのように伝えるか、自ら考えて解決していく力も不可欠。患者の死がトラウマになり、メスをおいた外科医もいる。生と死が隣り合わせの世界では、タフでないとやっていけない」(国立がん研究センター中央病院・渡辺俊一呼吸器外科科長)という医師たちの言葉からも、前述の面接評価基準を納得してもらえるのではないか。

しかし、受験生は皆若く、今後たくさんの人生経験を重ねていくことは、面接官も重々承知だ。「みているのは、潜在能力で、医師としての伸びしろ」と2校の医学部長が口を揃える。

受験生にすれば、ともかく学科試験をクリアしなければ、面接のことを考えても仕方がない、というのが本音だろう。人間性をみるとなると一朝一夕に準備できるものではないからこそ、「対策の1つとして日々の生活の中で自分の意見をまとめ、相手に納得してもらえるような表現力を身につけるようアドバイスしている」と宮辺校舎長。

年が明けると、いよいよ受験シーズンに突入する。東京医科大の不正入試は大きな影響をもたらすことなく、医学部人気は高いままシーズンを迎える気配が濃い。

受験生には「医師は見方によっては安定した職業かもしれないが、向いていなかったときには潰しが利かない仕事であることも知っておいてほしい。一緒に働きたいのは患者の命を守るという熱い気持ちを持って動く医師」という渡辺科長の言葉を贈りたい。

代田浩之
順天堂大学 医学部長
専門は循環器病学、冠動脈疾患の診断治療と予防、動脈硬化。2016年、順天堂大学医学部長、大学院医学研究科長に就任。研究者の目を持ち国際舞台や地域で活躍できる医師の育成を目指している。
 

渡邉善則
東邦大学 医学部長
専門は心臓血管外科。狭心症や心筋梗塞患者の冠動脈バイパス手術のスペシャリスト。幼い頃、手術で九死に一生を得た経験をもち、「人の命に関わる仕事に就くのなら、得意とする分野の技術を磨け」と母校の学生に説く。
 

高松 研
東邦大学 学長
専門は神経生理学、とくに神経回路の可塑性、記憶の分子機構。2012年から医学部長、2018年7月から学長に就任。カリキュラム改革と入試改革を進め、科学の目と人間性を備えた医療人の育成に尽力する。