ビジネス書は、終わりから読む
数字に強くなると同時に身につけたいのが、AI(人工知能)をはじめとしたITに関する知識だ。ランキングトップ10には、6位『人工知能は人間を超えるか』、7位『Excel 最強の教科書』などの4冊が並んだ。
「ITの導入が最も早いのが会計部門だといわれます。そもそも、デファクトスタンダード(事実上の標準)であるパソコンを開発したIBMは、1920年代から会計ソフトを販売しているなど、この分野の親和性は高いです。実際に、会計分野ではAIの導入も進んでいます。おそらく、車の自動運転よりも早いうちに、AIによる決算書作成ができるのではないでしょうか」
山田さんは、「最新テクノロジーの全体像を把握することで、今後どのスキルを高めるべきかが明確になる」と話す。
「前出の『統計学が最強の学問である』にも、ビッグデータは統計学の知識がないと使いこなせないといった内容があります。同じデータであっても、使い手のセンスや能力によって出力されるものが変わってくるということ。どうしても仕事に直結する分野の本から手に取りがちですが、ITは優先して学んで損がない分野だといえます」
たとえば銀行では、フィンテックの進展により定型的な事務作業をはじめ、営業現場においても提案資料の作成に用いるなどして、仕事量が軽減される。
その分のリソースが、戦略、企画などのアウトプットに差が出る領域に注ぎ込まれることになる。まさに9位の『人工知能を超える人間の強みとは』のタイトルにある通りに、AIやフィンテックを学ぶことで逆に何を人間の強みとするか、今後消える職種は何か、残る職種は何かが浮き彫りになってくるのだ。ちなみに本書ではAIが持つ能力と思考法の種類は人間よりも少ないとして、人間の強みとしての「直感」について多く取り上げている。
最後に、山田さんがどんなふうに読書しているかを聞いた。
「ビジネス書を読む場合は、終わりのほうから読みはじめますね。後半に書かれた内容を読むことで、本のゴールがわかる。そうすると、前半部分にどんなことが書かれているかの見当がつく。ビジネス書の著者視点から見ると、冒頭と最後に面白いものやキャッチーなものを持ってくるので、後半部分を読んでイマイチだったら『推して知るべし』ですね」
1.『帳簿の世界史』
ジェイコブ・ソール文春文庫
2.『サクッと起業してサクッと売却する』
正田 圭 CCCメディアハウス
3.『マンガ日本経済入門』
石ノ森章太郎 日本経済新聞社
(1)は世界史の大事件と絡めて会計を学べると推薦。30歳前後の今どきの経営者の考え方に触れられる(2)もオススメだという。
公認会計士・税理士
大阪大学文学部卒業後、東進ハイスクール、中央青山監査法人/プライスウォーターハウス・クーパースを経て、独立。一般財団法人 芸能文化会計財団理事長。著書に『女子大生会計士の事件簿』など。