そうした目線で今回のランキングを眺めると、トップ10に入った書籍のほとんどが「入門書」だということが見て取れる。

「いずれも、その分野のWikipediaを見てもサッパリわからないなという人でも、わかるように易しく、噛み砕いて書かれている本ですね」と山田さん。ランキング上位から、順を追って見ていきたい。

まず、1位の『統計学が最強の学問である』。山田さん自身も統計学の知識を学ぼうと手に取った一冊だという。

「ほかの多くの統計学の本とは違って、数字を苦手とする人に敬遠されがちな『微分積分』の数式がほとんど出てこないから、一般の人でも親しみやすく感じるはずです」

書籍にある図表にしても、手書き風で柔らかな印象。後半はやや難解な内容も増えてくるが、怖気づくことはない。山田さんも、最後のほうは流し読みだったという。

「この手の本は、課題解決や情報を得るために読む場合が多いですよね。ですから、すべての内容が自分にとって必要とは限りません。何もクソ真面目に最初から最後まで読むのではなく、難しい部分は思い切って読み飛ばしてしまえばいいのです」

会計から人間の本質が見えてくる

2位は、山田さんの著書『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』(2005年発売)。現在までに163万部という大ベストセラーの会計本だ。本書では、過去に簿記や経理をかじった経験があるか、取り組もうとしたが挫折した人をターゲットにしたそうだ。

「これより前に会計の本を2冊出していたのですが、さらにわかりやすく作ろうとしてできたのが、この『さおだけ屋~』でした。会計を学ぶための、本当に初歩の初歩としての位置づけの本ですね。会計のひとつの見方として面白い話だけをピックアップしているので、すべてを学ぶことはできません。今回、久しぶりに自分の本を読み返しましたが、巻末に索引をつけたり、会計用語集をつけたり、作り込んでいるな、と。手前味噌ですが、そうやって細部まで丁寧に作り込んだ本は読者にも伝わるものです。当時、今よりも暇で、ここまでやるだけの時間と余裕があったんでしょうね(笑)」

『さおだけ屋~』以降、会計本は続々出版されるようになる。07年に出版された、3位の『増補改訂財務3 表一体理解法』も、この分野では長く売れ続けている一冊。

「会計学について、体系的に学べる本ですね」と言う一方で、その間の橋渡しとしてオススメするのが5位の『マンガで入門! 会社の数字が面白いほどわかる本』だ。