ベトナムの平均月収の10倍以上を得られる

彼らは現在の仕事に満足し「ここでずっと働きたい」と言っているそうです。その大きな理由はやはり賃金でしょう。ベトナムの平均的な月収は1万5000円程度。ここでは日本人職員と同じ待遇にしており、その10倍以上の収入を得ることはできるのです。

最初に採用されたグエンティ・ホン・ニュンさん(27)が現在の生活や仕事について流暢な日本語で答えてくれました。

「ベトナムの実家に仕送りをしたうえに貯金もできます。昨年は休みをいただいて海外旅行も楽しみました。こんな生活はベトナムにいたら考えられませんでした。ただ、私がここで働いて感じる喜びはお金のことだけではありません。理事長、施設長をはじめスタッフはみな、やさしく接してくれますし、入所者の方をケアした時、ありがとうと言ってもらえるのもうれしい。仕事では大変なこともありますが、それ以上の喜びを感じています。毎日が充実していますし、このままずっとここで働きたいと思っています」

中央の黒のTシャツ姿がベトナム人のグエンティ・ホン・ニュンさん

外国人職員の採用が順調には細やかな気遣いがあった

もちろん、外国人職員の採用がここまで順調な裏側には運営サイドの細やかな気遣いもあります。たとえば採用する際、理事長と施設長が2人を伴なってベトナムの実家を訪ねたというのです。

「ご両親からすれば可愛い娘が異国の日本で働くのですから当然心配します。ならば、どんな人が運営している職場なのかを知ってもらい、少しでも不安を取り除いていただこうと思ったのです。またそれとは別に、ご両親に会い、どんな環境で育ったのかを知れば、その子の性格や考え方も把握できるというのもあります」(中村理事長)

実家訪問は送り出す側と受け入れる側、双方の不安を取り除く効果があり、今後も続けるそうです。

また、待遇面も日本人職員と変わらないといいます。

「同じ職員なのですから当たり前のことです。だから、外国人が酷い待遇で失踪したなんて話を聞くと悲しくなります。同じ人間なのですから“働いていただく”という思いで接しないのはおかしいですよ。幸い当施設では外国人職員が入ってくれて大いに助かっていますし運営も順調に行っている。同じ待遇にしても十分やっていけることを知っていただきたいですね」

何人であろうと会社や組織のために働いてくれるのだから、同じ待遇、態度で雇用するのは確かに当たり前です。この当たり前のことができていないのが日本の多くの経営者ではないでしょうか。

「私たちも当初は外国人を採用することに不安がありましたし、環境づくりなどにもそれなりの苦労はしました。でも、こうしてとてもうまく行っている。その方法論は、当施設を訪ねてくださればわかると思います」

中村理事長はそう言って胸を張りました。

(写真=iStock.com)
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