在宅介護で認知症や寝たきり状態となっている高齢の親を虐待した人の6割以上は「男性」(息子、夫)という調査結果がある。あるケアマネジャーは「男性介護者が虐待に陥る最大の原因は孤立。追い詰められる前にすべきことは、介護の悩みを語り合える仲間を見つけることです」という――。
※写真はイメージです(写真=iStock.com/AlexLinch)

高齢の弱者である親を痛めつける、卑劣な「息子」

「高齢者虐待 過去最多」

3月27日の新聞各紙は、こんな見出しの記事を掲載しました。厚生労働省が次のような調査データ(2017年度)を前日に公表したのです。

●在宅での(親族らによる)高齢者虐待
虐待と認められた件数:1万7078件
相談・通報件数:3万40件
●介護施設職員による虐待
虐待と認められた件数:510件
相談・通報件数:1898件

2006年に統計を取り始めて以来、いずれも最多を更新しており、在宅での親族による虐待の多さが際立っています。

さらに、衝撃を受けたのは、これに付随して発表された「虐待者の続柄」です。

在宅介護における虐待者総数1万8666人を調べたところ、最も多かったのが「息子」で40.3%、それに次ぐのは「夫」で21.1%。つまり、「男性介護者」による虐待が60%を超えているのです。

介護を必要とする主な世代は80代以降、息子世代は50代でしょう。50代の息子が認知症や寝たきり状態などの80代の親を罵倒したり、手をあげたりしているというのは本当に悲しい事実です。

介護者の男女比は、一般的に男性が3割、女性が7割と言われていて、男性は少数派です。にもかかわらず男性の虐待者が6割超えというのは、男性介護者による虐待がいかに多いかを示していると言えるでしょう。

介護虐待、その残酷で恥知らずな所業の中身

前回の記事で女性ケアマネジャーMさんの下記の証言を紹介しました。

「介護する人が介護されている人に対して暴言を吐く可能性や虐待をする気配が感じられるご家庭が一定の割合であります。とりわけ介護者が男性である家庭にそのケースが目立ちます」

前出の厚労省のデータはこの証言を証明していることになります。

介護における虐待の主な種類(出典:東京都福祉保健局ウェブページ)
●身体的虐待
暴力的行為によって身体に傷やアザ、痛みを与える行為や外部との接触を意図的、継続的に遮断する行為
●心理的虐待
脅しや侮辱などの言葉や態度、無視、嫌がらせ等によって精神的に苦痛を与えること
●性的虐待
本人が同意していない、性的な行為やその強要
●経済的虐待
本人の合意なしに財産や金銭を使用し、本人が希望する金銭の使用を理由なく制限すること
●介護・世話の放棄・放任
必要な介護サービスの利用を妨げる、世話をしない等により、高齢者の生活環境や身体的・精神的状態を悪化させること