見慣れた年表は何を書き落としているのか
日本史と世界史、どちらを学ぶのがよいのか? 歴史に興味をもつ人なら、一度は考えたことのある疑問だと思います。
日本人なら日本のことを知っておかなければならないから日本史、あるいは世界のことに目を向けるべきだから世界史――。いろいろな理由はあるでしょう。あるいは、受験のときに、「漢字が苦手だから世界史を選んだ」「どうしても横文字についていけなくて日本史を選んだ」とか。
本稿では、2つの視点から日本史と世界史を比較してみたいと思います。1つは、「日本史と世界史、どちらがより自虐的か」、もう1つは、「受験に有利なのはどちらか」。そして、まったく関係なく思えるこの2つのテーマは、じつは最終的には1つの論点に収斂されるのです。
前置きはこれくらいにして、本題です。まず、「世界史教科書風年表」を見てください。
1493年 ローマ教皇アレクサンドル6世、新大陸における紛争を解決すべく教皇子午線を設定。
1494年 トルデシリャス条約。教皇子午線に従い、東をポルトガル、西をスペインの勢力圏と決める。
気の利いた先生なら、「ポルトガルはアフリカに、スペインはアメリカ大陸に植民地をつくっていった」と解説してくれるでしょう。生真面目な生徒は、解説ごと丸暗記します。かくして、自虐的な子供が出来上がってしまいます。
なぜでしょうか。とくに自虐的な記述はありません。だから、問題なのです。世の中、何が書いてあるかよりも、何が書いていないかのほうが大事なのですから。人を騙すときには、嘘をつくよりも、大事なことを隠して教えないほうが、より効果的なのです。