世界史の教科書に「日本」はない

では、もう1つ。受験に有利なのはどちらか? 世界史です。

受験世界史を勉強する時のコツは、「広く浅く」です。フランス革命とか第2次世界大戦とか、受験問題として頻出の部分については、少しは深く勉強する必要はありますが、基本的には広く浅くです。どれくらい浅いかというと、「国の名前を覚えておけばよい」レベルです。

中国史でいうと、「三国時代の三国とは魏・呉・蜀」とか。三国志というとマニアが多い時代ですが、三国志に登場する人物を1000人覚えても、受験には1人も登場しないのです。

すべての時代のすべての国を取り上げることなど不可能なので、世界史では中心となるエリアが決まっています。西洋と東洋です。もっといえば、西洋とは、イギリスとフランスとドイツ、東洋とは中国です。日本の世界史教科書を読んでいると、西欧3国と中国が人類の曙から世界の中心であったかのように思えます。その4国が中心に描かれていて、記述量は圧倒的です。アメリカやロシアすら「成り上がり者」扱いです。さすがに20世紀になれば中心的記述になりますが。

世界史教科書は、いろんな分野の専門家が「自分の専門分野をぜひ盛り込んでほしい」と思っていて、ページの奪い合いなのです。東洋史では中国史、西洋史では英仏独史の専門家の発言力が強かったのですが、モンゴルやイスラム、アメリカやロシアの専門家が割って入っている、という状態が正確でしょう。日本史の専門家は、「日本史は別に教科書があるから、いいだろ!」で終わりです。

さて、この教科書のどこに日本が入り込む余地があるでしょうか。世界の片隅の島国だと思うしかありません。

ちなみにフランスには「世界史」という科目はなく、「歴史」です。人類の歴史など、「フランスとオマケ」です。1850年以降の近現代史だけを扱った教科書でも、そんな描き方なのです。