日本史と世界史、どちらを学ぶのがよいのか。「世界史は広く浅くでかまわないから受験に有利」といった声も聞かれるが、憲政史家の倉山満氏は、「日本の世界史の教科書には、出来事は書かれていても日本から見た文脈が省かれている。世界のなかに自らを位置づけない世界史を学んでも、それは他人事にすぎない」と語る――。
教科書には「コロンブス、アメリカ大陸を発見」とだけ書かれているが――上陸の模様を描いた19世紀後半の銅版画
(写真=iStock.com/THEPALMER)

見慣れた年表は何を書き落としているのか

日本史と世界史、どちらを学ぶのがよいのか? 歴史に興味をもつ人なら、一度は考えたことのある疑問だと思います。

日本人なら日本のことを知っておかなければならないから日本史、あるいは世界のことに目を向けるべきだから世界史――。いろいろな理由はあるでしょう。あるいは、受験のときに、「漢字が苦手だから世界史を選んだ」「どうしても横文字についていけなくて日本史を選んだ」とか。

本稿では、2つの視点から日本史と世界史を比較してみたいと思います。1つは、「日本史と世界史、どちらがより自虐的か」、もう1つは、「受験に有利なのはどちらか」。そして、まったく関係なく思えるこの2つのテーマは、じつは最終的には1つの論点に収斂されるのです。

前置きはこれくらいにして、本題です。まず、「世界史教科書風年表」を見てください。

1492年 コロンブス、アメリカ大陸を発見。
1493年 ローマ教皇アレクサンドル6世、新大陸における紛争を解決すべく教皇子午線を設定。
1494年 トルデシリャス条約。教皇子午線に従い、東をポルトガル、西をスペインの勢力圏と決める。

気の利いた先生なら、「ポルトガルはアフリカに、スペインはアメリカ大陸に植民地をつくっていった」と解説してくれるでしょう。生真面目な生徒は、解説ごと丸暗記します。かくして、自虐的な子供が出来上がってしまいます。

なぜでしょうか。とくに自虐的な記述はありません。だから、問題なのです。世の中、何が書いてあるかよりも、何が書いていないかのほうが大事なのですから。人を騙すときには、嘘をつくよりも、大事なことを隠して教えないほうが、より効果的なのです。