グーグル本社にアプライするという発想

【三宅】おっしゃる通り、英語を学ぶための目的意識は大切ですね。

三宅 義和『対談(3)!英語は世界を広げる』(プレジデント社)

【茂木】実は僕、今日の取材の前に西新宿にある定食屋に行ってきました。その定食屋の裏には予備校がたくさんあるんですね。なぜ日本のご家庭は予備校にあんなにお金を使うのかというと、予備校に行っていい大学に入ったらいい生活が待っていると思っているからだと思うんですよ。

いまの日本の英語学習で何が欠けていたかというと、英語ができるようになるといい生活が待っているというイメージにつながらないことだと思うんです。例えば日本の企業でも、国際派と国内派だと、本社勤務の国内派のほうが出世したり、国会議員さんを見ても、海外の大学院で学んだ人より、ドメスティックな人のほうが出世したりしますよね。

ところが今や経済がグローバル化してしまいました。ある日本企業の社長さんから聞いたのですけど、その会社が北京大学の優秀な学生を採ろうとすると、だいたいグーグルに持っていかれてしまうそうです。ここでいうグーグルとは、アメリカのマウンテンビューにある本社のことです。でも日本人の学生がグーグルに就職するというと、せいぜい六本木ヒルズのグーグルジャパンですよね。グーグル本社にアプライするという発想がないんですよ。中国人はみんなやっているのに。なぜかというと日本人の学生は英語ができないからですよね。

だから英語ができるとこんなに広い世界が生まれるという経験や感覚がないのはもったいないといつも感じています。

【三宅】おっしゃる通りですね。では次回はそのあたりをお聞きしたいと思います。

茂木健一郎(もぎ・けんいちろう)
脳科学者
1962年、東京都生まれ。東京大学理学部、法学部卒業後、同大学院理学系研究科修了。『脳と仮想』(新潮社)で第4回小林秀雄賞受賞。『結果を出せる人の脳の習慣』(廣済堂出版)など著書多数。
三宅 義和(みやけ・よしかず)
イーオン代表取締役社長
1951年、岡山県生まれ。大阪大学法学部卒業。85年イーオン入社。人事、社員研修、企業研修などに携わる。その後、教育企画部長、総務部長、イーオン・イースト・ジャパン社長を経て、2014年イーオン社長就任。一般社団法人全国外国語教育振興協会元理事、NPO法人小学校英語指導者認定協議会理事。趣味は、読書、英語音読、ピアノ、合氣道。
(構成=郷 和貴 撮影=原 貴彦)
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