英語を浴びると「クオリア」が身に付く

【三宅】それは本当に大事なことだと思います。あと、茂木さんは「英語のクオリア」というものを書いていらっしゃるのですが、これはどういうことなのでしょうか?

茂木氏「クオリアとは『意識の中の質感』という意味です」

【茂木】クオリアというのは「意識のなかの質感」という意味です。文法なども大事なのですけど、「この表現はありかなしか」という感覚、それがクオリアです。ネイティブの方は必ずそれを持っています。だからこれは先ほどの「パターン学習」に似た話ですね。実際、AIはゲームのルールを教わらなくても、パターン学習の過程でそれを把握することができます。

もしくは言葉のニュアンスとも言えますね。同じ言葉でも「この言葉はこういうときにはこういうニュアンスだ」みたいなことを自分でわかっていくというのが英語のクオリア。だから知識ではなく感覚がすごく大事だということで、結局それも英語を大量に読み、大量に聞くなかでだんだんわかってくることだと思っています。

そういえば社長ご自身も随分英語を鍛錬されていますよね。

【三宅】まだまだではありますが、英語は筋トレだと思っているので日々の鍛錬は欠かせないですよね。練習効率を上げるために「見ながら聞く」「声に出して聞く」といったことをいろいろオーバーラッピングさせたトレーニングに励んでいます。

好きなロックバンドの魅力を英語で伝えてみる

【茂木】それは素晴らしいですね。前回、プライミング効果について話をしましたけど、聞くという受け身だと言われていることでも、実は脳の回路としては話すという能動的な回路に繋げられる。認識することと運動で表現することはすごく相補的というか、補い合うものだということは以前から脳科学でも言われています。オーバーラッピングをすることによって、よりよく聞き取れるようになるし、よりよく読めるようになるというのはおそらくそうなのだろうと思いますね。

【三宅】茂木さんのお墨付きをいただけたので、引き続きがんばります(笑)。

あと今回の取材にあたって茂木さんの本をいろいろ読みました。非常に印象に残ったのが、茂木さんは、よく走っていらっしゃって、走ることが特別ではなくそれが普通(ホーム)である。だから三日坊主にならないしホームだからあえて「走るぞ!」というやる気など必要ない。英語の学びも同じように捉えたらどうか、つまりいつも英語を読んだり聞いたりしている状態を自分のホームにしてしまう、という考え方です。

【茂木】これはモチベーションとか目的意識の話になるかと思います。以前、聞いて印象に残っているエピソードがあります。英語に全然興味がなかったある中学校の男の子がいまして、その子があるときアメリカのロックバンドを好きになりました。そこで英作文の問題で紙の表裏いっぱいに、そのバンドに対する思いの丈を書いたそうなんです。するとあろうことか先生が「0点」をつけた。単語や文法が間違いだらけだったから。

それってものすごく良くないことだと思うんです。英語に興味がなかった子がロックバンドのことを英語で伝えたいと思ったわけですよね。そこはちゃんと評価してあげないと。やはりモチベーションはいちばん大事なところだと思うので。