自分の地位が高いと思っている人はひきにくい

まわりを見回すと、風邪にかかりやすい人とそうでない人がいるような気がしませんか。さて、それは遺伝によるものでしょうか、それとも環境によるのでしょうか。これに対する明瞭な答えは出ていないのですが、おそらく両方です。まぁ、言うたらなんですが、知能だろうが身長だろうが何だろうが、ほとんどは、「氏=遺伝」と「育ち=環境」の両方が関係している、と言ってほぼ間違いはありません。このことは覚えておいて、ときどきえらそうに誰かに教えてあげたら、賢そうに見えますからお勧めです。

睡眠不足や慢性的なストレスがあると風邪をひきやすい、ということが知られています。あたりまえやろ、と思われるかもしれませんが、意外にも疲労は関係ないらしい。風邪でも、他の多くのことと同じように、タバコは悪玉で、適度な運動は善玉です。サプリメントで風邪を予防することはできない、という研究成果もしっかり頭にいれておきましょう。ムダな投資と抵抗はやめたほうがお得です。

仲野徹『(あまり)病気をしない暮らし』(晶文社)

おもしろいのは、地位が高いと思っている人はひきにくいという研究成果があることです。実際に社会的地位が高いかどうか、ではありません。もうひとつ、これも理由はわかりませんが、社会的ネットワークが広い人、対人関係の豊かな人も風邪をひきにくいのです。付き合いが多ければひきやすそうな気がしますけど、逆らしい。不思議なことです。

予防には手洗いのほうが効果大

こういったことが影響するとはいえ、風邪をひくには、ウイルスに感染せねばならんのです。そう、それが絶対的な必要条件です。ということは、逆に考えたら、ウイルスにさらされなかったら風邪をひかない、ということになります。では、どうすればいいのでしょう。

ウイルスの侵入部位は、上気道、すなわち口や喉です。そこへウイルスがやって来るのは、飛沫か接触です。キスもあるんちゃうか、という意見もありそうですが、風邪をひいてる人とキスをするような輩は少ないやろう、ということで、とりあえず却下。

風邪の主要症状に咳があるので、なんとなく飛沫によると考えがちですが、むしろ接触の方がメインだと考えられています。もちろん飛沫もありえるのですが、よほど濃厚な接触の場合だけなので、マスクは予防にあまり役立ちません。

なので、重要なのは手洗いです。外から帰ったら、あるいは、屋内でも、風邪の人が触ったような場所を触れた後には、しっかり手洗い。普通の石けんで十分なのですが、指や手のひらといった部位それぞれを15~20秒は洗わないとウイルスは落ちませんから、いささかやっかいです。まぁ、そこまで完全にやらなくとも、できるだけ手洗いするのが望ましいのです。