医者選びが実はいちばん肝心だった

なんかないんか、責任者出てこい! と言う人がいるかもしれません。ちょっと落ち着いてください。それがひとつだけ、有効な方法があるんです。副作用もなく、風邪が一日早く治るという夢のような方法が。

それは、お医者さんに誠意をもって共感してもらう、ということであります。驚くべきことに、心からの同情をもってお医者さんにやさしくしてもらえれば一日早く治るというのです。それも、何度もしてもらう必要はなくて、一度だけで効果があるらしい。ホンマですか、と言いたくなるような話なのですが、2009年に『治療者の共感と感冒の期間』というタイトルで、ちゃんとした学術雑誌に紹介されています。「心からの」というのがちょっと微妙ではあるんですけどね。

病気のときくらい、ゆっくりしてもいい

さて、まとめに入ります。風邪をひかないためには、ウイルスに接触しなければいい。とはいうものの、季節になれば、人の集まるところ、多かれ少なかれウイルスがあるはずです。まったく出歩かなければいいのでしょうけれど、そういうわけにもいきませんし、家族が持ち込んでくるかもしれません。だから、できるだけウイルスを体の中に入れないようにする必要があります。それには手洗いがいちばん大事。

普段から、対人関係をたくさん持つようにしておく。しっかり睡眠をとって、適度な運動をして、慢性的なストレスをため込まないようにしておく。すなわち、日常的に健康的にいい人を目指していればいいのであります。というても、なかなか難しそうですね。

それでも風邪をひいたら、どうせ何日かたったら治るのだし、治療法はないのだからとあきらめて、ゆったりとした気持ちで休むこと。できたら、とってもいいお医者さんを受診して共感してもらいましょう。

なんかもう、当たり前すぎてスミマセン。まず、風邪はひかないようにする。それでもひいたら、無理をして仕事に出ず、ゆっくりするのがいちばんということですわ。そうしたら、職場や学校で同僚にうつすこともないのだから集団にとってもありがたいはずです。いつも思いますけど、日本人は働き過ぎとちゃいますか。風邪をひいた、あるいは、風邪をひいたと思った時くらい、ラッキー、ゆっくり休めるわ、と思って一日中寝ていてもバチはあたりませんで。

風邪について詳しいことをもっと知りたい人は、ぜひ『かぜの科学』を読んでみてください。備えあれば憂いなし、です。といっても、確実な予防法も治療法もありませんけど。

仲野 徹(なかの・とおる)
大阪大学大学院 教授
1957年、「主婦の店ダイエー」と同じ年に同じ街(大阪市旭区千林)に生まれる。大阪大学医学部卒業後、内科医から研究の道へ。ドイツ留学、京都大学・医学部講師、大阪大学・微生物病研究所教授を経て、2004年から大阪大学大学院・医学系研究科・病理学の教授に。 専門は「いろんな細胞がどうやってできてくるのだろうか」学。著書に、『幹細胞とクローン』(羊士社)、『なかのとおるの生命科学者の伝記を読む』(学研メディカル秀潤社)、『エピジェネティクス』(岩波新書)、『こわいもの知らずの病理学講義』(晶文社)など。趣味は、ノンフィクション読書、僻地旅行、義太夫語り。
(写真=iStock.com)
【関連記事】
コンビニの「サラダチキン」を食べるバカ
ヤバい病院は「待合室」を見ればモロバレ
医師が教える"絶対に風邪をひかない方法"
運動しない人の「生涯現役」が無謀な理由
40歳から親友を作ろうとする人はイタい