「丸亀製麺」社長がそのコスパに感動

2つ3つアルバイトを掛け持ちし、独立資金500万円を短期間で貯めた。独立の準備ができると、最後に立ち飲み業態の最高峰をいく東京・赤羽の「いこい本店」で、無給で短期間修業をさせてもらった。こうして08年9月、自衛隊の先輩とともに晩杯屋を運営するアクティブソースを設立。09年8月、1号店として「立呑み晩杯屋武蔵小山本店」を開業するにいたる。

現在、「晩杯屋」は「丸亀製麺」を運営する「トリドールホールディングス」の傘下にある。金子が「自社の価値を知りたい」と登録したM&A仲介業者が、トリドール社長の粟田貴也と金子をつないだのだ。粟田は「晩杯屋」をリサーチし、その圧倒的な商品力とコスト・パフォーマンスに感動、「ぜひともグループ企業に欲しい」と、誠意を尽くして晩杯屋の買収を申し入れた。金子はこう語った。

「粟田さんは晩杯屋を非常に高く評価し、創業者である私の感性や思いを尊重したうえで、晩杯屋の成長を支援したいと申し出られました。当社はまだ知名度の低い中小企業であり、実際はヒト・モノ・カネの経営資源と店舗展開でもがき苦しんでいたのが実情です」

「国内500店体制を目指す」

「鮮魚はスケールメリットの出しにくい食材ですが、トリドールさんと組めば、調味料や調理油、粉類などの仕入れにもスケールメリットが出てきて、トータルで原価率を抑えることができます。さらに晩杯屋の全国展開は確実に早まります。友好的なM&Aをお断りする理由が1つもなく、2回目にお会いしたときにM&Aをお受けしました」

粟田と金子は「早期に晩杯屋の国内500店体制を目指す」ことで合意した。その後、晩杯屋はトリドールの店舗開発部隊と連携し、晩杯屋の全店舗の立地、坪数、店舗・厨房レイアウト、注文方式、オペレーションなどを見直して、新しく「晩杯屋の最適モデル」を打ち出すことにした。これから、居酒屋市場に「晩杯屋旋風」が吹き荒れるだろう。

中村芳平(なかむら・よしへい)
外食ジャーナリスト
1947年、群馬県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。流通業界、「週刊サンケイ」記者などを経てフリーに。著書に『遊びをせんとや生まれけむ スポーツクラブ ルネサンス創業会長斎藤敏一の挑戦』(東洋経済新報社)など多数。
(撮影=編集部)
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