驚愕の立ち飲みチェーン「晩杯屋」

低価格業態のなかで、最も注目を浴びるのが、金子源が創業した「立呑み晩杯屋」である。「立ち飲み」は、酒屋で買った酒をそのまま店内で飲む「角打ち」が始まりで、リーマン・ショック後、繁華街の裏通りなどに雨後のタケノコのように立ち飲み業態が開店していた。

「立呑み 晩杯屋」渋谷道玄坂店(編集部撮影)

一般的には「安かろう、悪かろう」のイメージが強いが、「晩杯屋」はそれを、低価格・高品質な料理を提供することで打ち破り、成功を収めている。「アジフライ110円」「煮込み130円」「サバの塩焼き150円」「マグロ刺身6切れ200円」「中生ビール410円」「チューハイ250円」――。金子は築地の魚河岸や青果市場の仲買人から食材を格安に買いつけることによって、驚くような低価格での提供を実現させている。

5年のバイトで「仕入れ力」を養った

1度「晩杯屋」で立ち飲みすればわかるが、圧倒的な安さと、それを一切感じさせない美味しさにビックリするだろう。「センベロ」(1000円も出せばベロベロに酔えるの意)という流行語が生まれたが、晩杯屋の功績は大きい。

2店目である「晩杯屋大井町店」は、「飲兵衛の救世主」と呼ばれるほど多くの飲兵衛の心を捉えた。居酒屋業界に“晩杯屋ショック”を巻き起こすのである。こうして晩杯屋の快進撃が始まった。

金子は76年、群馬県新里村(現・桐生市)の生まれ。約5年間、自衛隊に勤務した後、焼き肉チェーン「牛角」で店長として働いた。そこで、「飲食店を成功させるのは、よい食材を安く仕入れる力にある」と痛感した金子は、同社を半年で辞め、仕入れのノウハウを学ぶために青果市場や築地市場、水産会社で約5年間アルバイトした。こうして金子は仲買人との間に信頼関係を築き、「仕入れ力」「買う力」を身につけたのだ。