地域密着で親切な対応を重視

クリエイトの募集・採用のページには「あなたにとってかかりつけのドラッグストアでありたい。お客様との心暖まるエピソードをご紹介いたします」との記載がある。店員の接客エピソードが紹介されているのだ。

そもそも、小売業のホームページに接客エピソードを掲載する会社は珍しい。それに加えて驚くのは、エピソード数の多さである。「ストローが、なかった」「大切なハタチのお客様をお待ちしていました」「おばあちゃんのガラガラも……」などと題されたエピソードが、実に16タイトルもある。

趣向を凝らしたクリエイトのエピソード集が、お客様向けのページではなく、人材採用のコンテンツとして掲載されている。これは仕事の魅力、やりがいのアピールはもちろん、地域密着で親切な対応を重視する経営方針をとっているメッセージであり、ホスピタリティへのコミットのあらわれである。

“小売業”なコスモス、“サービス業”なクリエイト

売上高が5580億円(2017年度)で、900店舗を越えるコスモスの店舗網は、南は鹿児島から北は福井、東は岐阜・愛知に及び、展開エリアを東へと広げている。今後、店舗の清潔感で高評価を維持し続けるには、店舗年齢の古い店の改装、店舗数増加に伴う従業員確保、エリア拡大にともなうロジスティクス(物流体制)の整備と物流コスト負担が経営課題になるといえる。

一方、売上高が2662億円(2017年度)で、関東圏に500店舗以上を展開するクリエイトの課題は、長期的な人手不足のなか、「量的」な従業員数の確保と「質的」な接客スキルの向上を続けるとともに、従業員満足向上によるリテンション(人材定着率向上)により、「クリエイトらしさ」を保ち続けることだ。

清潔感ある「店舗力」と低価格の「商品力」が強みの“小売業”コスモスと、接客サービスの迅速さやホスピタリティが高評価の“サービス業”クリエイト。コンセプトが明確な両社の「らしさ」は全く異なるが、競争の激しいドラッグストアにおいて、今後も1位~2位の満足度評価を維持し続けられるか、2019年2月発表予定の2018年度調査結果に注目である。

小倉 高宏(こくら・たかひろ)
日本生産性本部 主任経営コンサルタント
コープこうべに入社1年目で営業所トップ成績、2年目で全営業所およそ1000人中トップ成績を誇ったカリスマ営業マン。2008年から現職。小売・サービス業の現場に明るく、市場分析や経営指導、従業員育成を行っている。関西大学社会学部卒、関西学院大学大学院経営戦略研究科修了(経営管理修士:MBA)。著書に『経営コンサルティング・ノウハウ 5 マーケティング』(中央経済社)。
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