PBでは「2リットルの天然水」が59円

とにかく安い。薬品で5%、食品で10%は他店よりも「安い」。「ON365」というプライベートブランドの商品があるけれど、550mlのペットボトル入り天然水が58円。これはまだわかる。しかし、2リットルのそれが59円なんて……。

プライベートブランド「2リットルの天然水」が59円だった(撮影=藤原武史)

「いったい、他の店で売っている水の値段はなんなんだ」

わたしはこぶしを強く握り締めて、そう思った。

コスモス薬品は東証一部上場の企業で、年商5579億円(2018年5月期)。従業員総数2万8000名、九州から中部地方まで932店舗を持つ(2018年9月末)。創業者は会長の宇野正晃。彼はドラッグストア、食品スーパー、コンビニエンスストア、ディスカウントストアのいいところだけを集めた新業態をつくった。

宇野は自身が考えだした店舗形態を「小商圏型メガドラッグストア」と呼んでいる。これまで小売業では、大きな商圏には大きな店舗、小さな商圏には小さな店舗という考えが常識だった。だが、彼は品揃えの多い大型店(売場面積2000平方メートルまたは1000平方メートル)を1万人という小さな商圏につくることにした。小さな町にメガドラッグストアを出店した結果、地域の人々にとっては遠くまで行かなくとも、毎日必要な消耗品は豊富な品揃えのコスモスで買い物ができるようになった。

あえて「繁盛店はつくらない」

また、宇野は「繁盛店はつくらない」と言っている。

ある店舗が小さな商圏で成功をおさめ、売り上げが増えたら、同社はすぐに隣接した地区に出店する。通常の小売店チェーンならばすぐ近くに同業態、同ブランドの店を出すことを嫌う。共倒れすることが怖いのだ。しかし、コスモス薬品はあえてチェーン店同士が競合することを恐れない。2店舗に増えたことで、地域の人がさらに便利になり、また、ふたつの店の売り上げが一店舗の繁盛店より少しでも増えればそれでいいという考え方だ。

社長の横山が補足説明をする。

「店長の評価も売り上げ、成績では決まりません。それよりも管理する能力、経営する能力、そして、人柄です。なんといってもうちの社是は『純情』ですから。当社は個々の店舗の売り上げを増やすよりも、コスモス薬品が全体として成長することを目的としています」