縁起ものの「年越しそば」は値上げされるのか
では、年越しそばの値段も上がるのか。
前出の小高さんは「値上げも考えましたが、年内は見送ることにしました」と話す。
「そもそも蕎麦は庶民の食べ物。まして、年越しそばは縁起ものですからね」
東京都内の数店にも聞いてみたが、「値上げはしない」との回答だった。食べる側としてはありがたい話だが、しわ寄せは末端のそば店へという切ない構図も垣間見える。
「今、上げられないのは2019年秋に増税が控えているからでもあるんです」
そう話すのは、茨城県牛久市の人気そば店「季より」の店主、有馬優雄さんだ。
「消費税が上がったら、そばの値段を見直さざるを得ない。今、値上げして、また価格改定となったら、『あの店は高い』とお客さんは離れていく可能性がある。特に地方の人たちは飲食の値段にシビアですからね」
年越しで食べていい外国産そば、ヤバい外国産そば
一方で、国産のそばに外国産を混ぜて、従来通りの仕入れ値を維持しようとする動きも出てきている。輸入のそばは国産の半値程度。国産にブレンドして使えば、原価が抑えられるというわけだ。
となると、気になるのは味や安全性だが、「日本からの技術指導によって品質のよいものが増えている」と前出の荒川さんはいう。
「特にアメリカ産はここ数年、品質も収穫量も安定しています。不作の年はそばの質も落ちるため、『今年の北海道産なら、アメリカ産のほうが上』との評価もあるほどです」
ただし、中国産については玉石混交だという。「きちんと管理されたものであれば風味もよく、安心して口にできる」(荒川さん)。その一方で、一部では品質の悪いものもある。ちなみに、中国産はそばの流通量の4割を占め、安価な立ち食いそばや乾麺に使われるのは大抵が中国産。知らず知らずのうちに口にしているのもまた事実なのだ。
そうはいっても、一年の締めくくりの年越しそばぐらいは国産品を食べたいという向きに、国産100%の手打ちそばを手繰れる店20店舗を紹介しよう。行列ができる店も多いが、待った甲斐のある店ばかりだ。
そもそも年越しそばの由来は、そばのように細く長く「健康長寿」を願ったというのが定説。蕎麦は切れやすいことから今年の不運を裁ち切るとのいわれもある。
「そばは元来つながりにくいもの。それを人の知恵と忍耐を持って細く長くつなぐのがそば切りです。人と人との縁。平和な年と年。これをつなぐのが年越しそばなのでしょう」(荒川さん)
旨い手打ちのそばで良い新年を迎えたい。