昔ながらの喫茶店の定番メニュー「ナポリタン」。その聖地といえば東京・新橋だ。食べ歩きルポを得意とするライターの下関マグロさんは「新橋界隈の店に共通する特徴は、太麺にからむ濃厚なケチャップ味と粘度の高さ。そうした味が好まれるのには理由がある」という――。
なぜ「新橋のナポリタン」は愛され続けるのか
旧知のライター北尾トロと「町中華探検隊」を結成したのは2014年のことだ。
「町中華」とは昭和時代に創業し、中華といいながら、カツ丼、カレーライス、オムライスといったメニューも出している町の中華屋さんを指す。本格中華と区別する意味で、町中華を「日式中華」と呼ぶ人もいる。
町中華は店主の高齢化や後継者がいないなどの理由でどんどん閉店していた。これは今のうちに食べておかなければという危機感のようなものがあって、町中華探検隊は結成されたのだ。
同じように減りつつあるのがナポリタンだ。
ナポリタンも町中華に似たところがあって、イタリアのナポリではなく第2次大戦後、日本の横浜で生まれた。スパゲティナポリタンというメニュー名を最初に出したのが横浜のホテルニューグランド。ただし、こちらのナポリタンはケチャップ味ではなくトマトソースだ。ケチャップのナポリタンを出したのは同じ横浜にある「センターグリル」だった。
つまりナポリタンは、日式イタリアンなのだ。この横浜の2つのお店は今もナポリタンを出しているので発祥の味を体験したい人は横浜へ行くといいだろう。
茹で置きされた太麺、たっぷりのケチャップで味付け
いま、「ナポリタンの聖地」といえば、新橋だ。
新橋のナポリタンは、茹で置きされた太麺でやわらかく、具材はピーマン、タマネギ、マッシュルーム、ハムなどで、たっぷりのケチャップで味付けられている。「昔ながら」「懐かし」という形容詞で語られる昭和のナポリタンを提供するお店が多い。
新橋は、ナポリタンだけではなく「サラリーマンの聖地」とも言われている。実はナポリタンとサラリーマンは強いつながりがある。なぜならサラリーマンはナポリタンが好きだからだ。