「私はひとりで頑張った。なのに妹、妹、妹ばっかり! ずるい」

「やっぱりそうですよね……。財産は次女にほとんど相続させるしかないですよね。実はそのことが心配で、ご相談の前に長女に連絡をしてみたんです。でも……」

母親は別居している長女に相談に同席してもらえないか、電話で頼んでみたそうです。

すると、思いもよらない反応が返ってきました。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/Serghei Turcanu)

「私はずっとひとりで頑張ってきた。職場でのいじめや嫌がらせにも耐えてきた。それなのにいつも妹、妹、妹ばっかり! 妹は何もせずに楽してる。ずるい。私はもう結婚もできない。私はずっとひとりぼっち。誰にもわかってもらえない! どうせ今度もそうなんでしょ? 私には関係ない。もう勝手にして!」

長女が長年心の奥底にため込んできたものを、母親にぶつけてきたそうです。今まで次女のことばかり気にかけてきて、長女のことを考える余裕はなかった。長女とも同居していた頃は家族の仲もよかった。長女が独立した後もそれは変わらないはず。心のどこかで「長女は大丈夫」と勝手に思っていた。

しかし、それは間違いでした。その事実に母親はとてもショックを受けてしまいました。

私も次女の事だけを考えていました。財産のほとんどは次女に相続させることになるだろう。そうすると、長女には半ば強引に説得をすることになるかもしれない。次女のためには仕方がないことですよね、と。長女の気持ちも考えずに……。

しかし、本当にそれでよいのか?
それがこの家族にとっての正解なのか?

私はわからなくなってしまいました。長い沈黙が続きました。

「長女にはずっとさみしい思いをさせてしまいました。謝りたい」

少なくとも長女抜きでこのままお話を進めていくのは好ましくない。私はそう思いました。

「ご長女のお気持ちを全く考えず、今までご次女のお話だけをしてしまいました。大変申し訳ございません。やっぱりご長女の事も心配ですよね。将来の見通しの表や提案書は作りますが、それはあくまでもご家族で話し合うためのきっかけ作りだと思ってください。必ずしも提案通りにする必要もありません」

私はさらに続けました。

「お金(の配分)をどうするか決める前に、まずはご長女も含めたご家族3人で話し合ってみることが必要かもしれません。ご家族3人のそれぞれの思い、不安、これからどうしていきたいか、などすべて出しきってみるとよいかもしれませんね」

「ええ、そうですよね。私もそう思います。ただ、長女が話し合いに応じてくれるどうか……」

「それはもうお母様の本心をご長女にぶつけてみるしかないと思います。今までさみしい思いをさせてしまい申し訳ない。あなた(ご長女)も含めた家族の将来について話をしたい。あなたの不安や思いもぜひ聞かせてほしい。家族3人にとってこれから何をどうしていけばよいのか、あなたとも一緒に考えていきたい、など。ぜひお母様の言葉で伝えてみてください」

「そうですよね。長女にはずっとさみしい思いをさせてしまいましたし、そこは謝りたいと思います。それに長女にももっと話をしてほしいですし」

「もちろん、いつかどこかでお金の話もしなければなりません。話し合いの結果、相続が平等になるのか不平等になるのか、今のところはわかりません。しかし、どのような結果になろうとも、あきらめなければ何かしらの対策は考えることができると思います」