体内時計に働きかけ、夜の休息状態にする

そこで開発されたのが、抗不安作用や筋弛緩作用に関わる受容体への作用が弱く、鎮静作用に関わる受容体へ主に作用する非ベンゾジアゼピン系の睡眠薬だ。

「最近の不眠症治療では、まずこの種類の睡眠薬を使うことが多くなっています。いずれも作用時間が短めで、主に入眠困難や睡眠維持困難に向きます」(福西院長)

ベンゾジアゼピン受容体作動薬の次に登場した睡眠薬は、2010年から使われるようになったメラトニンという眠りに関わるホルモンの受容体に作用する「ロゼレム」だ。

「メラトニン受容体作動薬は、体内時計に働きかけ、体を夜の休息状態にするような薬です。不眠のタイプでは入眠困難な人に使われることが多く、特に昼夜逆転気味の人に向いています。鎮静的な効果は強くないが、体内時計のずれを修正する作用もあるので睡眠習慣の改善にもなります」(林田院長)

睡眠薬で最も新しいものが、14年から使われるようになったオレキシン受容体拮抗薬の「ベルソムラ」だ。

「脳内で覚醒状態を維持するホルモンであるオレキシンの指令を遮断する薬です。緊張が高まって覚醒調節系の働きが強いと入眠時だけでなく、睡眠中も神経が過敏になって夜中に中途覚醒を起こしやすいので、そうしたタイプの不眠に有効で、より自然な睡眠に近い作用をする薬です」(林田院長)

抗ヒスタミン作用を利用した睡眠改善薬

睡眠薬の強さでもある作用時間は血液中の薬の半減期により4段階に分かれている。「マイスリー」や「ハルシオン」などは超短時間型で、服用から1時間未満で効果が表れる代わりに、持続時間が2~4時間と短い。寝つきが悪い人には睡眠導入剤として効果的だが睡眠の途中で起きてしまう人には不向きだ。

服用から1~3時間で効き始め、6~12時間持続する「短時間型」は朝まで効き目が続くため、夜中に何度も起きてしまう人に向いている。「中時間型」「長時間型」はそれ以上の時間も効き目が続くため、朝までぐっすり寝たい人には効果的だが、寝すぎるリスクもある。

ところでテレビのコマーシャルで見て、「ドラッグストアで睡眠薬が買える」と思っている人もいるだろうが、処方箋なしで買える睡眠薬はない。薬局で買える医薬品はパッケージに「睡眠薬」ではなく、「睡眠改善薬」と書かれているはずだ。