寿退社→専業主婦が「得をしない」3つの理由
ここまでは男性目線で書いてきましたが、女性目線で考えても、寿退職で得られる満足(仕事のストレスからの解放)と、新たに生じるストレス(自由に使えるお金が一生減る)と、さらに経済的不利益があること(生涯賃金は下がり、産休・育休の給付はもらえず将来の年金額も下がる)を天秤にかければ、お得な選択肢ではないと思います。この話、もう少し詳しく解説してみましょう。
なぜ、「結婚も出産も退職事由としては考えない」ことが女性にとっても夫婦にとっても重要なのでしょうか。マネープランとして考えたとき、大きく3つの理由があげられます。
1.明らかに生涯賃金格差が大きい。
結婚して退職し、専業主婦となれば、正社員と比べ生涯賃金で2億円、派遣社員となれば正社員と比べ1億円くらいの格差が生じ、老後(年金など)の資産格差も数千万円以上になるおそれがある。
2.一度離職すると復職に苦労する。
産休・育休期間からの復職は法律で保障されているが、離職後の就職活動は必ずしも正社員で戻れるとは限らない。
3.離職ではなく産休・育休を取得すれば、各種給付を受けられる。
産休期間は自分の健保から、育休期間からは自分の雇用保険から、給付金を受けられるが、専業主婦になるとその対象とならない(復職までの期間にもよるが、子供1人で給付は数百万円規模になることもある)。
一度離職すると正社員としての復職が難しくなる
まず「明らかに生涯賃金格差が大きい」点について確認すると、大卒女性が正社員として働く場合の生涯賃金は2億4000万円ほどあります。賃金以外にも退職金を多くもらえたり、厚生年金額が増えたりすることなどを考えると、セカンドライフにおいて4000万円ほどの差がつくと見込まれます。税金や保育料を引かれても、子育てしながら正社員でがんばる価値は絶対にあるのです。
次に「一度離職すると復職に苦労する」点があげられます。ある調査では、専業主婦である女性の多くが、正社員としての雇用を希望しながら、パートや非正規の形で働いている現状をデータで示しています。これはたった一度の離職が、その後の復職の大きなハードルとなることを表しています。
しかし、産休・育休から復職する女性の雇用を会社側は拒んではいけないことが法律で決まっています。また産休・育休を理由として解雇することも禁じられています。復職後にいきなり配置転換するような意地悪をしたり、育休を理由に評価を下げたりするようなことも禁止されています。
もともと日本の会社員は解雇されにくい立場にあり、自分から「寿退職」や「おめでた退職」を申し出ない限り、女性の働く権利は手厚く保護されています。今、正社員で働いている女性がこの制度を利用しない手はありません。