トヨタを脅かす新ビジネス「乗り捨て型カーシェア」

ドイツに「CAR2GO」という乗り捨て型のカーシェアを展開している会社がある。ダイムラーとBMWが共同出資している会社だが、このサービスがUberに匹敵する勢いで利用者を増やしている。私はカナダのバンクーバーで初めて経験した。空港に迎えにきた高級車がCAR2GOの車だったのだ。

運転手に話を聞いたら、バンクーバーにはCAR2GOの車が約3000台ばらまかれていて、それが全部ベンツとBMW。「Sクラス」の高級車から「スマート」のようなコンパクトカーまで、現地では用途に合わせて、それこそ乗り捨て自転車の感覚で利用されているという。

「この2、3年、市内に住む人で新車を買ったという話は聞きませんね」と語るその運転手も私を空港まで送ったら乗り捨てて、安い車に乗り換えて家に帰るそうだ。

トヨタにとってはUberのようなライドシェアよりも、CAR2GOのようなサービスのほうがはるかに怖い。トヨタ以下、日本の自動車メーカーは、ミドルクラスが「所有」するにはリーズナブルな車づくりを得意としてきた。しかし、好きな車をTPOに応じてアプリで選んで「利用」する時代には、中途半端な日本車は選ばれにくい。どうせなら“晴れ舞台”ではBMWのようなラグジュアリーカーに乗ろうということになる。

あるいは近場で用を足す場合には軽に近い低価格車が選ばれやすい。ましてや自動運転の時代になったときに、自宅に日本車で迎えにきてもらいたい人がどれだけいるだろうか。両トップが興奮気味の提携の発表を見ていて、そのような世界の厳しい現実が見えているとは思えなかった。

(構成=小川 剛 写真=AFLO)
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