経産官僚「日産が大勝負に出ようとしていると感じた」

豊田氏は経済産業審議官の後、内閣官房参与などを経て、日本エネルギー経済研究所の理事長に就任。その後、キヤノン電子や村田製作所の社外取締役になっていた人物だ。その経産OBを日産は受け入れたのだ。「何か、日産が大勝負に出ようとしていると感じた」と経産官僚は言う。

西川廣人社長が、2017年の4月に共同CEO(最高経営責任者)兼副会長からCEO兼社長となり、ゴーン容疑者が日産のCEOから外れた(ルノーや三菱自動車、ルノー日産会社はその後も会長兼CEOだった)タイミングで、ルノーからの自立を模索する動きが始まっていたのかもしれない。それと、ゴーン容疑者の不正追及が一体のものなのかは、今の段階では分からない。

だが、会長を解任してゴーン容疑者がいなくなった日産を「救う」ために日本政府や財界が動き出す可能性は十分にある。ゴーン容疑者逮捕直後から安倍首相官邸に日産関係者が出入りし、財界首脳にもルノー・日産・三菱自動車のグループ全体を今後統括する「後任会長」を出すよう依頼が出ているとされる。

フランス政府やルノーはグループ全体のトップをルノーから出すよう求めてくるとみられるが、これに対抗する「日の丸連合」を作ろうということのようだ。

ゴーン氏の不正摘発が陰謀かどうかは別として、ルノーと日産の今後が、両国政府の懸案事項になることだけは間違いなさそうだ。

磯山 友幸(いそやま・ともゆき)
経済ジャーナリスト
1962年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。日本経済新聞で証券部記者、同部次長、チューリヒ支局長、フランクフルト支局長、「日経ビジネス」副編集長・編集委員などを務め、2011年に退社、独立。著書に『国際会計基準戦争 完結編』(日経BP社)、共著に『株主の反乱』(日本経済新聞社)などがある。
(写真=時事通信フォト)
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