レギュラー陣につられて笑う仕組み

とんねるず、バナナマン、関根勤さんというこの企画のレギュラー陣が、出演者のパフォーマンスを温かい目で見守っている、というのも大事なポイントです。彼らが腹を抱えて笑っているからこそ、多少マニアックなネタであっても、視聴者はつられて笑ってしまうのです。

そもそも、関根さんは「元祖マニアックモノマネ芸人」とも呼べる人物です。若手の頃から千葉真一、大滝秀治など、ほかの芸人が扱わないような意外な切り口のモノマネを得意としてきました。豊富なレパートリーの中には「国を開けなさい」と言うペリー、電球を発明した瞬間に「サクセス!」と叫ぶエジソンなど、歴史上の人物のモノマネもあります。

さらに言えば、番組のMCを務めるとんねるずが世に出たきっかけとなった『お笑いスター誕生!!』(日本テレビ系)で披露したネタの中にも、「マニアックモノマネ」が多く含まれていました。『巨人の星』の星一徹の顔マネ、正月にたこ揚げをするアントニオ猪木のモノマネ、当時の人気番組『11PM』のオープニング再現など、当時の彼らのネタには目の付け所だけであっと言わせるような面白さがありました。

河本準一も博多華丸もメジャーにした

とんねるずと関根さんは自分自身がマニアックモノマネを武器にして世に出てきたからこそ、それを見つめる眼差しが温かいのです。

漫才、コント、本格派のモノマネといったネタに比べると、マニアックモノマネは「邪道」というイメージがあります。しかし、単純な面白さや破壊力では決して引けは取らないのです。とんねるずと関根さんの立ち振る舞いからは、マニアックモノマネという独特の道を行く芸人に対するリスペクトが伝わってきます。

次長課長の河本準一さんの「お前に食わせるタンメンはねえ!」というギャグも、博多華丸・大吉の華丸さんの児玉清のモノマネも、この企画で披露されたのがきっかけでメジャーになりました。この2人をはじめとして、この企画で人気者になるチャンスをつかんだ芸人はこれまでに大勢います。

新しい才能を発掘するための貴重な場所として、今でも「細かすぎて伝わらないモノマネ選手権」は必要とされているのです。(文中敬称略)

ラリー遠田(らりー・とおだ)
ライター、お笑い評論家
1979年生まれ。東京大学文学部卒業。テレビ番組制作会社勤務を経て、ライター、お笑い評論家として多方面で活動。お笑いムック『コメ旬』(キネマ旬報社)の編集長を務める。主な著書に『なぜ、とんねるずとダウンタウンは仲が悪いと言われるのか?』(コア新書)、『逆襲する山里亮太 これからのお笑いをリードする7人の男たち』(双葉社)、『とんねるずと『めちゃイケ』の終わり〈ポスト平成〉のテレビバラエティ論』(イースト新書)など多数。
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