笑いの山をつくる「斬新な工夫」

まず、舞台に登場したパフォーマーが自分自身でこれから披露するネタのタイトルを述べます。タイトルは「○○しているときの○○」のように説明的なものが多く、かなり長文になることもあります。

題材がマニアックであればあるほど、この説明は長くなる傾向があり、その時点で「そんなところに目をつけたのか!」という驚き混じりの薄い笑いが起こりやすくなっています。それによってネタに対する視聴者の心理的なハードルが下がり、笑いやすくなります。説明をあえて馬鹿丁寧にすることでマニアックモノマネの面白さを際立たせているのです。

また、ネタを終えたパフォーマーが「穴に落ちて舞台の底に消えていく」という演出も画期的でした。この企画では1つひとつのネタの時間が短いため、パフォーマーの出入りに時間がかかるとそれだけでテンポが悪くなってしまいます。もちろん舞台から退場するシーンだけを編集でカットすることはできますが、そこを切ってしまうとライブ感が損なわれてしまいます。ネタが終わるタイミングでパフォーマーを穴に落としてしまえば、退場する時間を削れる上に、笑いどころが増えて一石二鳥です。

たとえモノマネ自体がそれほどウケなくても、人が穴に落ちる姿はそれだけで笑いになります。パフォーマーを穴に落とせば、1つひとつのネタの最後に必ず笑いの山を作ることができるのです。これもマニアックモノマネを見せる工夫として斬新でした。

「ショートネタ」流行の火付け役

「細かすぎて伝わらないモノマネ選手権」の手法を応用する形で、2007年には『爆笑レッドカーペット』(フジテレビ系)という番組が始まりました。この番組では、芸人が1~2分程度のショートネタを披露して、ネタが終了するとベルトコンベヤー状の舞台装置に乗って横に流されていきます。穴に落とすという「縦移動」の代わりに、ベルトコンベヤーで流す「横移動」が発明されたのです。

『爆笑レッドカーペット』は特番として話題になったのち、レギュラー化されて2009年にはゴールデンタイムに昇格する人気番組となりました。この時期には深夜番組の『あらびき団』(TBS系)などもあり、「ショートネタ」のブームが起こっていました。もともとテレビでは長い時間のネタを集中して見てもらうことが難しいという傾向はあったのですが、この時期にはそれに拍車がかかり、どこの局でもショートネタ番組が乱立していました。

そんなショートネタのブームを生み出すきっかけになったという意味でも、「細かすぎて伝わらないモノマネ選手権」は革新的な企画だったのです。