絶望と向き合いながら、闘病生活を送る日々。そんな状況だからこそ、「一番大切なもの」がわかったといいます。3人の女性に、闘病の過去と現在について聞きました。第1回は女優の生稲晃子さんです――。(全3回)

※本稿は、「プレジデントウーマン」(2018年7月号)の掲載記事を再編集したものです。

いつも受けている自治体の乳がん検診を忘れてしまった――。2010年の暮れ、あまりにも多忙だったので、すでに無料検診を受けられる期間は終わっていました。でもなんとなく気にかかるので、その話を友人の医師にしたところ「ついでに人間ドックを受けたほうがいいよ」とアドバイスされ、胸だけでなく全身を検査することになりました。

その結果は、なんと乳がんのみ「再検査」。右胸の乳頭あたりに小さながんが潜んでいたことが、細胞診の結果わかりました。私が42歳のときです。人生に「たら、れば」はないというけれど、そのとき人間ドックを受けていなかったら自分はどうなっていたのだろうと、背筋が寒くなることがあります。

腫瘍が小さかったので、しこりとその周囲の組織だけを取る「乳房温存手術(部分切除術)」を受けることになりました。リンパ節への転移もなかったので、2時間ほどの手術が終わって目覚めたとき、「これで元気になれる!」と明るい気持ちになったのを、昨日のことのように鮮明に思い出します。でも、「小さくてもがんはがん。侮れません」という主治医の先生の言葉が、後になって、ボディーブローのようにきいてくるのです。